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2024年8月24日(土) 香川県観音寺市にて、香川県で海ごみと言えばこの人!と言われるビーチクリーン活動の第一人者でNPO法人アーキペラゴ副理事長であり、かがわ里海大学運営委員でもある森田桂治さんを講師にお招きして、あわいひかり主催で「ビーチクリーン体験&海ごみ講座」を開催いたしました。
当日は大人18名、子供5名が参加し、天気に恵まれた有明浜海水浴場でビーチクリーンを実施。その後に、場所を観音寺市総合コミュニティセンターに移動して、海ごみに関する講座を開催いたしました。
ビーチクリーン体験では、森田さんのご提案で参加者を4〜5人程度のグループに分け、ただごみ拾いをするのではなく、世界中の海洋プラスチックごみをモニタリングするICC(International Coastal Cleanup)へのデータ提供を踏まえ、どのようなごみが海岸に漂着しているのかを調べるため、ごみを種類別に分け、データ化した上で回収作業を行いました。有明浜に漂着している海ごみは、ペットボトルやキャップ、食品の包装フィルムなどが数多く見られたほか、豆カンと呼ばれるプラスチック製の漁具が多くありました。今回はあくまでも、ビーチクリーンを体験するという目的と外気温35℃の炎天下のため、実際の活動時間は30分程度でしたが参加者の方々は額に汗しながら、楽しく懸命にビーチクリーンに勤しんでおられました。参加された方に活動後に感想をお聞きしたところ、「ごみはあるけれど、昔よりは少なくなっている」「プラスチックのごみが多い」「注射器などの医療用器具がどうしてあるの?」「なんでこんなものが?というものもあってびっくりしました」など、海ごみへの意識と関心を高めていただくきっかけになったのではないかと思います。
また、ビーチクリーン体験の後は、有明浜に隣接する観音寺市総合コミュニティセンターに場所を移し、森田さんによる海ごみ講座を開催。香川県内における海ごみ問題の現状をはじめ、世界の海ごみの課題や、環境や動植物に与える影響などについてお話しいただきました。瀬戸内海における海ごみの問題としては、年間に4500トンもの海洋ごみが流入しており、その中の3000トンが陸地から海へ流入しているということです。残りは海域で発生したものが1200トン、外海から流れ込んだものが300トンということです。森田さんによると、陸地から海へ流れ込んだごみは意図して捨てられたものよりも台風や大雨などの災害で流出したものが多く、4500トンの海ごみのうち、回収できているものは1400トン、外海へ流出しているごみが2400トン、約700トンが海底に沈積していると言われています。つまり、瀬戸内のごみの約70%が回収されないまま、海に流されています。
回収されなかったごみは、日本だけでなく海外の島にも漂着しているのが分かっており、瀬戸内でしか見られないごみの代表格「広島県で使われているカキ養殖用パイプ」がミッドウェイ島周辺にも多く流れ着いています。ミッドウェイ島で繁殖している海鳥の雛の内臓からは、凄まじい数のプラスチックが消化されないまま残り、それが原因で命を落とすことが報告されています。海洋に浮かんだプラスチックを親鳥が餌だと誤認して雛に与えてしまっているそうです。
そのほかにも、網やロープ、釣り糸などの漁具がウミガメやアザラシなどの海洋生物に絡まり、命を落とす事故が発生していることも問題化しており、世界的に早急な対策が求められています。
また、参加者に身近な香川県での海ごみ問題としては、瀬戸内海に浮かぶ島嶼部の沿岸に漂流したごみの回収があると言います。人口の多い小豆島や直島を除き、住民が減少している島では、回収する人が不足しており、大きな問題になっているそうです。
さらに問題は島だけでなく、香川県内の海岸でも起こっており、紫外線や海水で朽ちたプラ
スチック片や枕などに使われるクッション材、米の栽培に使用されているコーティング肥料、破損した人工芝の破片などが「マイクロプラスチック」となって海岸に押し寄せ、破片が小さいこともあって回収が困難になっています。
しかしながら、森田さんがビーチクリーン活動を始めた2008年頃と比べれば、香川県における海ごみは確実に減ってきているということで、これは人々の海ごみへの意識が高まったことによるビーチクリーンへの関心とボランティアによる回収活動の賜物だとおっしゃっていました。来年は瀬戸内国際芸術祭も開催されるので、海ごみのない美しい瀬戸の島々を来島者に見ていただくためにも、島嶼部でのビーチクリーンにも力を入れたいということです。
私たち“あわいひかり”も海ごみ問題に積極的に関わり、10年後、50年後、100年後も変わらぬ美しい瀬戸内の海を後世に遺すため、そして、地球上のすべての生物が人の出すごみで悲惨な目に遭わないよう、尽力したいと考えています。
当日、参加いただいた皆さま、そして、講師として参加いただいた森田さま、ありがとうございました。
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取材・文
森本 未沙(海育ちのエバンジェリスト)