Report レポート

農業で得た収入をベースに、 新たな自分の可能性に挑戦する 次世代の兼業農家について聴いてみた。

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あわいひかり編集部のある香川県観音寺市と隣接する三豊市は、以前から農業が盛んに行われており、都市部から少し離れると田んぼと畑が一円に広がる四国でも有数の農業振興地域です。季節によって育てている農作物は違えども、1年を通じて穀物や野菜、果物が盛んに作られていた印象があります。
しかし、近年では耕作放棄地があちらこちらに増えはじめ、今話題の米不足をはじめ、日本の食料自給率の低下、農家の高齢化と担い手不足など、人が暮らしていくために1番大切な食料について、改めて熟考しないといけないと考えていました。
そのような中、三豊市で新しい農業の在り方を提案し、実行している瀬戸内ReFarming株式会社さまの噂を聞きつけ、その代表である横山さんにお話をお伺いする機会を得ましたのでご紹介していきたいと思います。

農業は地域の資産になる。
半農半Xで耕作放棄地を資産に変える。


あわいひかり:はじめまして、あわいひかり編集部です。今日はお忙しいところお時間をいただいてありがとうございます。
早速ですが、瀬戸内ReFarmingさんの取り組みについてお話をお伺いしてもいいですか?

横山さん:こちらこそ、私たちの取り組みを取り上げていただいてありがとうございます。
三豊市の面積は約222平方キロメートルあって、その約5分の1の46平方キロメートルが農地です。でも、その中の約半分の20平方キロメートルが今、耕作放棄地になってしまっています。つまり、三豊市の10分の1が何にも使われていない土地ということになるんですね。でも、そんなのもったいないと思いませんか?

あわいひかり:農地は、地域にとっての財産だと私たちは考えています。だからこそ、耕作放棄地を誰もが使いやすい農地へと再生することで、地域に新しい資産を増やしていこうと考えました。
耕作放棄地が増えている原因として、農家が減っていると言われています。ここ10年で約20%以上の農家が減少しました。しかし、専業農家はそれほど減ってはいないんですね。兼業農家の数が減っているのが問題なのです。
そこで、私たちは誰もが気軽に兼業できる農業の在り方を提案しようと思い、瀬戸内ReFarmingを創設しました。



あわいひかり:なるほど!誰でも兼業農家になれるという発想は面白いですね。農業に携わったことのない人でも、兼業農家になれるのでしょうか?

横山さん:はい。私たちはこれからの兼業農家を「半農半X」と呼び、農業に興味があれば誰もが気軽に兼業農家になれる基礎を作っています。空き家を購入してリフォームし、新しい価値を提供するように、農地をリファームしてお貸しすることで兼業農家の数を増やそうと考えています。

農業で得た収入をベースに、
新しいことに挑戦し、地域への貢献も。


あわいひかり:半農半XのXは、ある程度収入を得るためのスキルがあるということですが、スキルがない方でも兼業農家はできるのでしょうか?

横山さん:そうですね。半農半XのXの部分ってスキルが高い人は、それだけでやっていけるので、わざわざ農家をしなくてもいいわけですが、農業をやりながらXの部分を広げていくという考え方もできると思うのです。
つまり、農業で一定の収入を得ながら、新しいXに挑戦するということですね。

あわいひかり:そういう考え方は、新しいですね。今までは本業がある人が副業として農家をしていたけれど、農業をベーシックインカム(生活の基盤)と考えて、新しいスキルや仕事を見つけるというのは面白いと思います。
でも、農地だけを提供しても農業のスキルを身につけることができないのでは?

横山さん:おっしゃる通りです。ですから、瀬戸内ReFarmingとしては、農業のインフラ、つまり、農地だけでなく農業の知識や販路といった農業で収入を得るためのサポートを行っています。また、地域事業者さまと連携して農業以外での収入を得るサポートやこの地域で暮らすための住居のサポートなども行っています。半農半Xを超えて「半農半ローカル」という、半分を農業に、半分を地域にというコンセプトで農業にも地域にも貢献したいと考えています。



あわいひかり:農地や農業知識はもちろん、住むところや農業以外の収入の部分までサポートしていただけるんですか!?それは、魅力的ですね。

横山さん:はい。私たちの取り組みに興味を持たれて、UターンやIターンでこちらに来られても住むところがないのでは困ります。そこで地元の不動産屋さんと提携して空き家情報などの提供もしていますし、「ファーミングハウス 瀬戸内SEED」という移住を希望される方が共同で暮らす事業も行っています。瀬戸内SEEDでは週に3日、朝の3時間農業をすることで、住居と光熱費、一部食材を提供しています。職業と住居をご提供することでベーシックインフラが整い、新しいチャレンジもしやすい環境が整うと思います。

あわいひかり:現在は、どのくらいの方が瀬戸内SEEDを利用されているのでしょうか?

横山さん:今は6名の方がいらっしゃいますね。今までで30〜40名の方が利用されました。その中で専業農家としてやってみたいという方は2割ほどで、ほとんどの方が兼業農家もしくは、農業を通してこの町で暮らしてみたいとSEEDを活用してくれています。



あわいひかり:先ほどのお話の中で、農業で収入を得るための販路もサポートするということでしたが、どのような販路があるのでしょう?

横山さん:作っていただいた野菜はすべて瀬戸内SEEDで買い取らせていただき、市場へ出荷したり、地元の飲食店やスーパーマーケットに購入していただいています。

あわいひかり:野菜や果物を作っても売れなければ収入は得られませんから、全ての作物を買い取っていただけるのは魅力的ですね!

横山さん:はい。復唱になりますが、ベーシックインフラとは、農業である程度生活していけるための基礎をご提供するというものです。これがあるから、安心して別の仕事や取り組みに挑戦できるんだと思います。

あわいひかり:現在、どのくらいの農地をリファームして貸していらっしゃるのでしょう?

横山さん:今は4haを管理していますが、作付けは1haのみです。しかし、3年後には10haをめざして継続的に活動を続けていきます。

地球環境に優しい農業へ。
そして、地域に愛される人材へ。


あわいひかり:昨今は環境対応について、さまざまな業界で取り上げられていますが、横山さんとしては農業の環境対応についてどのようにお考えですか?

横山さん:農業も今では機械化が進み、大型の農機具を使うことで環境汚染にもつながると思います。かといって、機械を使わずに昔ながらの方法では人手も体力も持ちません。
そこで、不耕起栽培という耕さない・もしくは耕起回数を減らすことで土壌にCO2を留めるというやり方を一部圃場で実践しています。



あわいひかり:具体的にはどういうことでしょうか?

横山さん:光合成で吸収したCO2は植物の幹や根を通って土壌に蓄積されます。これを耕すことで再度空気中にCO2が排出されるのですが、耕さずに地中に貯めることができると、地球温暖化に貢献できるという考え方です。この取り組みは、山梨県で活動が進んでいて、4パーミル・イニシアチブという活動で実施されています。

あわいひかり:4パーミル・イニシアチブについて教えていただけますか?

横山さん:4パーミル・イニシアチブとは、世界の土壌表層の炭素量を年間4パーミル(0.4%)増加させることができれば、人間の経済活動などによって大気へと排出される温室効果ガスを実質ゼロにすることができるという考え方で、農業分野から脱炭素社会の実現をめざす取り組みです

あわいひかり:なるほど。

横山さん:これを取り入れて、三豊市の経済活動で排出されるCO2をこの取り組みでゼロにすることができると面白いと思います。作物のみならず、二酸化炭素も地産地消できるので一石二鳥ではないでしょうか。

あわいひかり:最後に、これからの活動や目標などがあれば教えてください。

横山さん:環境の面では土壌の健康を考えるとサスティナブルという持続可能の枠組みを超えて、自然環境の回復をめざす「リジェネラティブ農業」を行っていきます。

また私たちはよく「NO FARMER」でありたいと答えます。今までの農家の概念に収まらずに生産の枠組みを超えたFARMERでありたい。そして僕ら瀬戸内ReFarmingは、そのような人材が農業・地域に挑戦できる基盤(インフラ)を作っていきます。
そして、ここに集まった人材がどんどん育ち、地域の役に立ってくれる「人を生む農業」を行っていきたいと考えています。

あわいひかり:今日はありがとうございました。これからの活動を楽しみにしています。そして、引き続き、瀬戸内ReFarmingさまの活動をご紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。


今回取材した企業様:
瀬戸内ReFarming株式会社

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あわいひかりでは、これからも地元である観音寺市や香川県、
四国の環境にいいことに取り組む企業や団体、人をご紹介していきます。
ぜひ、お楽しみに。

  • 取材・文

    森本 未沙(海育ちのエバンジェリスト)