Report レポート
パッケージ業界では、知らない人はいない環境配慮型フィルム「バイオマスフィルム」。今回は、今話題のフィルムの実態を探ってみました。
カーボンニュートラル時代を担う梱包素材の新スタンダード。
それがバイオマスフィルム
カーボンニュートラルが広く認知され、地球温暖化抑止のために近年注目を集めている素材。それが「バイオマスプラスティック」です。バイオマスとは、生物から生まれた再生可能な有機資源のことであり、バイオマスプラスティックはトウモロコシやサトウキビなどの植物由来の原料から作られたプラスティックのこと。そのプラスティックをフィルム状にしたのがバイオマスプラスティックフィルムなのです。パッケージフィルムとして広く知られているものとしては、バイオマスからエタノールを生成してつくられたポリエチレンをフィルムにしたバイオマスポリエチレンフィルムがあります。このフィルムも焼却すると当然、二酸化炭素を排出しますが、原料の植物が育つときに光合成で吸収した二酸化炭素と同等であるとの解釈で大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えないことから、カーボンニュートラルとして推進されています。
さまざまな用途に利用可能!
そこがバイオマスポリエチレンフィルムが人気の理由!
近年、バイオマスポリエチレンフィルムが注目される理由として、通常のポリエチレンと同様に成型しやすく、耐衝撃性や、耐薬品性、低温シール性など、いろいろな用途に向いていることが考えられます。バイオマスポリエチレンフィルムをパッケージとして使う際には、元来のポリエチレンフィルムと同じく、シーラントフィルムとして使用されることが多く、特性の違う別素材と貼り合わせた、2層や3層構造等で多く使用されています。しかし、バイオマスポリエチレンフィルムに限らず、バイオマスフィルム全般に言えることですが、バイオマス比率が高くなるほどフィルムの価格が高くなる傾向があり、使用を躊躇する企業も多くあると考えられます。
商品を守り、環境にも配慮する。
これからのパッケージに求められる重要な役割。
最近ではバイオマスフィルムを使ったパッケージがたくさん開発されていますが、だからといって、そのフィルムを使った全ての商品が環境に高く貢献しているパッケージであるとは限りません。例えば、バイオマス度10%のバイオマスポリエチレンを使ったフィルムでも、それ単体ではパッケージ素材としては適さないため、別素材のフィルムと合わせて利用することになります。その時、もう一方のフィルムのバイオマス度が0だとしたら、パッケージ全体のバイオマス度は当然下がってしまいます。つまり、バイオマス度の高いフィルム同士を合わせ、使用することが環境高配慮型のパッケージと言えますが、現実はそう簡単なものではないのです。パッケージは、商品の特性や配送、陳列、または賞味期限の延長など、さまざまなことを考慮して、お客さまに安全にお届けするのが役割。だからこそ、個々の商品に適したさまざまな素材のパッケージフィルムが必要とされているのです。商品の保護と環境への配慮。どちらも欠かせないからこそ、新しい素材がつぎつぎと誕生しているのです。
すでにバイオマス度80%の高バイオマスポリエチレンフィルムを使用し、パッケージ全体で石油由来プラスティックを約50%削減した「グリーンコープ」商品本部の大隈さんにお話をお伺いしました。
現在、どれくらいの商品にバイオマスフィルムを使ったパッケージを採用されているのでしょうか?
グリーンコープでは毎週約1,200アイテムほどを扱っています。そのうち食品が約800アイテムあります。今はまだその中の40アイテムぐらいです。だから、まだまだといったところですね。
そもそも、なぜバイオマスフィルムをパッケージにお使いになろうと考えたのでしょう?
グリーンコープでは、2000年にまとめた「グリーンコープ環境政策」として、脱プラスティックを推進する4R運動というものをやっています。Refuse(断る)、Reduce(減らす)、Reuse(再使用)、Recycle(再生利用)の頭文字を取ったものですが、その政策のもと、カーボンニュートラルの観点から1つの手段として環境配慮型パッケージに目を向けたということです。
20年以上も前から対策をされていたのですね。
バイオマスフィルムを採用されたことで、どのような効果がありましたか?
1つめはグリーンコープとして地球環境に貢献していること。2つめは九州・中国地方、兵庫、大阪、滋賀、福島に住む約43万人の組合員の方々に、グリーンコープは環境保全に積極的な組合であり、環境に優しい商品を扱っている組合であることを意識していただくきっかけとなったことではないでしょうか。
バイオマスフィルムを採用するにあたってのデメリットは?
やはり包材の仕入れ費用のアップですね。環境に配慮したものというのは包材に限らず高コストになるのは理解しています。だからといって、商品価格に大きく影響するほどのものでもないですから、許容範囲といったところですね。
バイオマスフィルムを導入するにあたって苦労したことはありますか?
それまで使っていた包材とは素材が違うので、今まで使っていた包装機を再設定する必要がありました。バイオマスフィルムに変更してからシールが不完全だったり、引っ付いてはいけないところが引っ付いていたり、包装作業に1手間増えてしまったこともありましたが、機器メーカー様やフィルム会社様、印刷会社様のご協力で今では正常化しています。
バイオマスフィルムを導入して、組合員の方の反応はどうでしょう?
また、これからの商品パッケージに期待することを教えてください。
うちの組合員の方々はもともと環境やエコといったことへの意識が高い方が多いこともあって好意的に受け止めていただいています。
グリーンコープとしては、2027年にカーボンニュートラルを掲げていますので、さらにバイオマスフィルムを使った商品を増やしていこうと考えています。また、減容化やリサイクルフィルムなど、環境への配慮が高い包材が誕生することを期待しています。
最後に今後のグリーンコープさまの環境への取り組みについてお聞かせください。
先ほども話しましたが、グリーンコープでは2027年にカーボンニュートラルを実現するよう取り組んでいます。その一環として、まずはGCふくおかの福岡西支部の配送車36台と移動販売車1台をすべてEV化しました。その車に充電する電気も一般社団法人グリーンコープでんきが太陽光発電した電気を使用し、二酸化炭素排出ゼロを実現しました。この動きをどんどん各支部に広めていき、さまざまな取り組みを複合的に行うことで、地球にも人にも優しい組合でありたいと考えています。
包材のコストUPも承知の上で、果敢にも高バイオマスポリエチレンフィルムを採用されているグリーンコープ。インタビュ―を通して随所に環境への意識の高さを感じました。またそれを支える理解ある組合員さんたち。お互いの良い関係性があってこそ持続可能な未来に向けての活動が活性化するのだと気づかされました。今後の更なる取り組みに期待します。
あわいひかりでは、これからも『あっ!』と驚く新素材や『なるほど!』と感心するエコな素材はもちろん、環境にいいことに取り組む企業や団体、人をご紹介していきます。
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取材・文
岡崎 誠(グリーンパッケージャー)