Series 連載

『間』と書いて『あわい』と読むことをご存知でしょうか。
現代ではあまり使われない大和言葉のようですが、次のような意味があるそうです。

『間』『あわい』とは、物と物のあいだ、距離、関係性。
『間』『あわい』とは、時間と時間のあいだ、時間的隔たり。
『間』『あわい』とは、人と人の間柄、相互の関係。

そこには単なる何かと何かの間という空間ではなく、意味のある空間が存在しているような気がしませんか?
このあわいひかりでは、人と自然と、今と過去と、誰かと誰かの間(あわい)について考えていこうと思います。

大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)

「鳥の目、虫の目、魚の目」で未来への道を探します

第16章 表と裏、ふたつの顔をもつ島――荘内半島・丸山島を海から探訪する

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陸側から見た丸山島(間時間の表紙の写真の島です)

日常の中で見慣れた風景も、少しだけ「立ち位置」を変えてみると、まったく思いがけない素顔を見せてくれることがあります。

10月中旬の秋晴れの日、香川県西部の燧灘に突き出た荘内半島(しょうないはんとう)を訪れました。
お目当ては、沿岸に浮かぶ小島「丸山島(まるやまじま)」です。
今回は陸から眺めるのではなく、地元でジオの活動に取り組む「西讃ジオの会」の前川さんにお声がけいただき、仁尾港から船を出して海の上から島を見学する機会を得ました。

この日は秋風が心地よく、波も穏やかな最高の船出でした。
しかし、船が島の裏側へと回り込むにつれ、眼前に広がったのは、普段私たちが陸から見ている姿からは想像もつかない、力強くも荒々しい大地の記憶でした。

陸からの「可愛らしさ」と、海からの「雄々しさ」

陸側(東側)から丸山島を眺めると、こんもりとした緑の木々に覆われた、丸く愛らしい姿をしています。
干潮時には砂州が現れて歩いて渡れる「トンボロ現象」でも知られ、どこか穏やかで親しみやすい印象の島です。

ですが、船で西側に回り込むと、その表情は一変します。
島の西側は、冬の間に強い北西からの季節風と荒波を直接受ける厳しい環境にあります。
そのため植物が育ちにくく、岩肌が露出し、風化が進みやすい状態に保たれています。
つまり、海の上に剥き出しになった「島を形作る岩石そのもの」を直接観察できる、天然の地質標本のような場所なのです。


海側から見た丸山島(岩肌が剥き出しになっています)

西側の切り立った斜面を仰ぎ見ると、そこには見事な「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」が広がっていました。
マグマが冷え固まる際に規則的な割れ目をつくる現象ですが、丸山島の柱状節理は一筋縄ではいきません。
縦、横、斜めと、あらゆる方向にダイナミックに走り、入り組んでいます。
さらに、岩盤の割れ目にマグマが割り込んで固まった「貫入(かんにゅう)」の痕跡もはっきりと見て取れました。

太古の昔、この足元でどれほど凄まじい地動と熱のエネルギーが蠢いていたのか――斜面に刻まれた荒々しい岩の幾何学模様は、大地の脈動をそのまま伝える無言の雄弁さをもって迫ってきます。


水平に走る柱状節理が確認できます。

視点を変えることで見えてくる、地域の深み

実は、この「海側から見るとまったく異なる容貌をしている」という事実は、地元でシーカヤックのアクティビティを行っている方々に教えていただくまで知りませんでした。
普段から海に親しみ、波間から島を見上げているからこそ気づく景色です。

また今回は、地質やジオに詳しい先輩方も多く参加されていたため、船の上では活発な考察が交わされました。
なぜこのような複雑な柱状節理が出来上がったのか、貫入している岩石の正体は何なのか、岩の色の違いは何によって生じているのか――目の前の景色を前に、皆で地形が辿ってきた成り立ちや物語を想像し合う時間は、まるで大昔の地球の謎解きをしているようで、知的なワクワク感に満ちていました。

同じ島であっても、見る角度(東か西か、陸か海か)を変え、知る視点(歴史か、アクティビティか、地質か)を重ねるだけで、風景の解像度は驚くほど跳ね上がります。


ベテランの皆さんの知識がとにかくすごい

おわりに――「間(あわい)」にひそむ発見の楽しさ

見慣れた地元の景色の中に、まだ自分の知らないこんなにもドラマチックな表情が隠されていたこと。
そして、それを仲間とともに発見し、面白さを分かち合えること。

日常と非日常のあわい、陸と海のあわいで出会った丸山島の素顔は、私に「視点をほんの少しずらすだけで、世界はこんなにも面白くなる」というシンプルな、けれど大切な歓びを教えてくれました。

みなさんもいつもの散歩道や見慣れた風景を、少し違う角度から覗いてみませんか。そこにはきっと、まだ誰も気づいていない大地の物語が眠っているはずです。


仁尾港に帰ってきました

  • 撮影

    大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)