Series 連載

1000軒以上のカレーを食べ歩き、その多様性と歴史、店ごとの個性に魅了され続けてきた。
カレー屋の夢を実現する為、アルバイトの掛け持ちを始めたが挫折。挫折から学んだ経験と、環境への関心も持ち持続可能な未来のための取り組みをカレー業界でも促進したい。独自のスパイスカレーと瀬戸内の食材を焦点を当て連載していく。

安藤 真理子(アートディレクター)

第2話 文旦の魔法でオフィスに笑顔が溢れる

高知の実家から送られてきた文旦を持って、マホさんが会社にやってきた。
マホさんの爽やかな笑顔はまるで心が踊っているようだった。
この黄金色の果実には、きっと幼い頃からの思い出が詰まっているのだろう。


私はその文旦を使ってちょっとした冒険をすることにした。
文旦の爽やかな酸味と苦味を活かして、カレーを作ることにしたのだ。

普通のカレーとは一味違う、文旦入りスパイスカレー。
自分でもどんなカレーができるか楽しみだった。

まずは文旦の皮を剥き、果実を南インド風ムングダルのサラダに入れた。
そして酸味を加えるため果汁を搾りチキンカレーの隠し味に入れた。
サバカレーの仕上げには、文旦の香りを楽しむため皮を刻んで入れた。

どちらのカレーにも文旦はとても相性が良くこの時期にはピッタリだった。


2種類のスパイスカレーが完成し、
ついに「木曜日はせとうちカレー」がオープンした。



ラッシー作りとホール担当を買ってでたモエリさんが、
ラッシーに文旦を入れる提案をくれ、自宅で文旦シロップを作り持ってきてくれた。

「暑い日が多くなってきたし、ソルベにしたい」


カレーの後にひんやりとしたソルベを一口。
口の中で広がる爽やかさに、思わず笑みがこぼれた。

飲み過ぎで二日酔いだった上司は
「この食べられない固いスパイスが嫌なんだよ。」
とぶつぶつ文句を言いながら食べていた。

上司の文句を掻き消すように
「えっ!美味しい〜!」「カレーに文旦って合うんだ〜」
という東京営業所のみんなの声があちこちから聞こえ、私も思わず笑顔に。

文旦が持つ魔法の力で、オフィスは笑顔と活気に溢れた。

次はどんな冒険が待っているのか、楽しみでならない。



ある梅雨入り前の晴れた午後、香川本社から大きな段ボールが届いた。
開けてみると、色鮮やかな野菜たちがぎっしりと詰まっていた。
その中でもひときわ目を引いたのが、立派なかぼちゃだった。

このかぼちゃでカレーを作りたい!


  • 文・撮影

    安藤 真理子(アートディレクター)