Report レポート
九州に拠点を置き、西日本を中心とした16の生協で構成されている一般社団法人グリーンコープ共同体。あわいひかりではこれまでにも、グリーンコープさまの環境保全への取り組みについて何度か取材をさせていただき、ご紹介してきました。
今回は、グリーンコープさまが環境保全のために具体的にどのような取り組みを行なっているのか、その目的や経緯、そして将来のビジョンについて、環境保全活動の責任者であるグリーンコープ生活協同組合連合会 常務理事 河嶋敏秀さまにお話を伺いました。
Section 1.環境包材の導入の背景ときっかけ
あわいひかり:本日はお忙しいところ、ありがとうございます。グリーンコープさまにはグリーンコープカーボンニュートラルEXPOや、バイオマスフィルムに関する記事をあわいひかりでご紹介させていただいた時にもお話を伺いました。今回で3回目の取材になります。いつもご協力いただいて、ありがとうございます。
河嶋さま:いえいえ、こちらこそ弊社の取り組みに関心を持っていただいてありがとうございます。
あわいひかり:早速ですが、グリーンコープさまが環境対応型の包材を導入された経緯やきっかけについてお聞かせいただけますでしょうか?
河嶋さま:はい。グリーンコープでは、地球環境を守り、組合員さまの豊かな暮らしをサポートするために、随分前から3R、4Rに取り組んでいました。また、ごみを燃やすことで発生する二酸化炭素やその他の有毒なガスの発生による公害にも取り組む必要があると考えていました。さらに2019年にはSDGsへの取り組みを含めて、これまで以上に持続可能な社会のため、私たちにできることをさらに踏み込んで取り組まなければいけないと感じました。
あわいひかり:もともと包装に対してどのような課題意識や問題意識をお持ちだったのでしょうか?
河嶋さま:私は当初、商品開発の担当をしていたこともあり、ピロー包装に私たちの課題があると考えました。すでに、肉は紙トレーに変更、CTFトレーは回収を行なっていましたし、しょうゆやドレッシングなどはガラス容器にしてリユース可能な状態でした。そこで、調理の時短化でどんどん調理食品が増え、ピロー包装が増えてきた経緯もあり、包装用の包材に目が向くようになりました。
あわいひかり:バイオマスフィルムやリサイクルフィルムの採用を初めてご検討されたのは、いつごろ・どのような場面でしたか?
河嶋さま:2019年に、まず私たちができていないことを洗い出しました。ワンウェイのトレー、深絞り、ピローがピックアップされ、それぞれのメーカーに働きかけて、検討会を行い、取引先のみなさんと一緒に考えてみることをスタートしたのです。その時、福岡県で食料品の卸売を行なっているリバーグリーンさんから紹介されたのが、北四国グラビア印刷さまが開発したバイオマス素材を80%使用したフィルムでした。
あわいひかり:環境配慮型パッケージの提案を受けた際、どのように感じましたか?
河嶋さま:分別回収ができない限り、包材がごみになることは分かっていました。しかし、現在の技術では完全に分別するのは不可能ですし、仮にできたとしても膨大なコストがかかります。そこでバイオマス100%のパッケージフィルムが作れないかと考えたのですが難しいことがわかり、バイオマス素材80%のフィルムを採用することになりました。常に「MAXで環境に配慮したい」と思っているので、いつかはバイオマス100%のフィルムが開発されることを期待しています。
Section 2. 環境包材を導入する決断と判断軸
あわいひかり:環境配慮型パッケージの採用にはコストや技術的な課題もあったかと思いますが、それでも「やろう」と判断された一番の理由は何でしたか?
河嶋さま:それまでにもバイオマス比率が低いものをご提案されたことはありましたが、グリーンコープらしくないと思ってお断りしてきました。5%や6%のバイオマス素材を使ったものを、あたかも環境にやさしい包材を使っていますなんて大きな顔をしていうことは私たちにはできません。だからこそ、バイオマス比率が最低20%以上のものでなければ環境包材とは呼ばないことにしています。
あわいひかり:「環境への配慮」と「商品価格・利便性」のバランスについては、どのように考えておられますか?
河嶋さま:バイオマスフィルムを導入するにあたっては、多層フィルムだからこそ、パッケージの厚みを厚くしてバイオマス比率をあげることもできるのですが、グリーンコープが大切にしていることは、単に比率だけではありません。パッケージを薄くしたり、小さくしたりすることも大事だと考えましたので、バリア性を犠牲にして日持ちが短くなったとしても、パッケージの重量が増え、ゴミも増えることの方が問題だと思いました。
また、バイオマスフィルムを導入すれば、包材費は上がります。これを許容できますか?と理事会にかけて検討していただいてから商品の価格設定を進めています。もちろん包材費が増えた分を商品価格に転嫁するのではなく、サイズを小さくすることでコストを削る努力もしています。仮に、コストアップを受け入れなければ、取引先さまにシワ寄せがいって負担になるので価格を据え置くことが単純にいいとは言えません。
あわいひかり:環境に配慮した包材を使用するために多少のコストアップは受け入れるという組合員さまの知識や考え方が素晴らしいですね。
河嶋さま:一般の方にごみを多く出すのがいいか、減らすのがいいかと聞くと、当然みんな減らすのがいいといいます。再利用するのと、ごみにするのはどちらがいいですかと聞くと、再利用するのがいいといいます。組合員の人が特別なのではなく、普通の人なんです。普通に考える人がいて、それを実現できるすべがあるかどうか、それを一緒に作っていく組織だからこそ導入が可能なのだと思っています。
Section 3. 環境包材の導入にあたっての工夫
あわいひかり:バイオマス素材を使用する以外で、印刷など具体的に工夫された点があれば教えてください。
河嶋さま:バイオマスフィルムの導入にあたって、印刷の色数変更を行ないました。具体的には5~6色のインキを使用していたものをこのタイミングで3色に減らしました。
また、会員の方々から包材の統一感がないと言われていたこともあり、この機会に解決しないといけないとも思っていました。
さらにフルカラーの包材は過剰包装でないかとご指摘もありましたので、コストを下げつつ環境への配慮もできることから色数の削減に努めました。
あわいひかり:結果としてインキの使用量の削減と、色合わせのフィルムロスの量、それに伴うCO2排出量も抑えられますからメリットが大きいですね。
河嶋さま:結果としては、組合員さんからはパッケージに統一感ができ、環境にいいと評判がよかったですね。
※環境配慮型パッケージの採用効果
Section 4. 組合員さまの反応と成果
あわいひかり:環境配慮型パッケージの取り組みについて、どのように伝える工夫をされていますか?
河嶋さま:新しく組合員になる方もいらっしゃるので、毎年春に取り組みについての説明会を開催しています。そこでは、グリーンコープ全体の環境配慮への取り組みについて伝えていて、それを聞いた会員さまから地域の方々にもお伝えしていただいています。やはり口コミは強いです。今はSNSが広報の主力になってきていますが、気に入っていただいたものが、どんどん広がっていくのは私たちにとってもうれしいことですね。
※グリーンコープさまが採用している環境配慮型パッケージの一例
あわいひかり:組合員さまの反応はどうでしょう?
河嶋さま:自分が良いことをしているという自覚が組合員さまの中で広がったことで、もっと環境に良いことを実践してみよう、なにが環境に良いことなのかをもっと知ろうと思っていただいて、それを信頼している人たちに伝えていっていただけるきっかけになっているのではないかと感じています。
あわいひかり:環境配慮への取り組みが、グリーンコープさまのブランドや信頼性にどのように寄与していると感じますか?
河嶋さま:今まで、加工食品などのパッケージは環境への配慮が難しいといわれてきました。もっと工夫ができるだろうとも言われてきましたが、ようやくバイオマスフィルムの導入ができ、組合員のみなさまからお褒めの言葉をいただいたと感じています。このことは非常にうれしいですし、環境配慮やカーボンニュートラルに総力をあげて全力で取り組んでいるからこそ、グリーンコープとしてのブランド価値を押し上げてくれているのではないかと思っています。
グリーンコープのスローガンは「みどりの地球をみどりのままで」です。ちょっと前の大人と今の大人が壊してきた地球環境を今の大人が真剣に考えて、最大のできることをやることが大事ではないでしょうか。
Section 5. 今後の展望と課題
あわいひかり:今後さらに進めていきたいパッケージに関する環境への取り組みはありますか?
河嶋さま:パッケージの課題としては深絞りが解決できていないので解決したいと思っています。また、ピロー型のパッケージに切り替えられていないものもあるので、そちらを広げ、進化させていきたいと思っています。
あわいひかり:今後、グリーンコープさまはどのような共同体になろうと考えていらっしゃいますか?
河嶋さま:地球環境に対する配慮に全力で取り組む組合でありたいですね。カーボンニュートラルに全力で取り組んで達成した企業が誕生すれば世の中が変わります。そのトップランナーとして、まずはグリーンコープが全力で取り組み実現させる。そして社会にもっともっと良い影響を与えられたらと思っています。
あわいひかり:グリーンコープさまの環境に対する取り組みは、まだまだ終わることはないと思います。その都度、あわいひかりとしても取材させていただきたいと思っていますので、今後ともご協力をお願いいたします。本日は、ありがとうございました。
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取材・文
森本 未沙(海育ちのエバンジェリスト)