Report レポート
広島県福山市に本社を構える株式会社CFP。自社の再生加工工場にて、廃プラスチックを再生材料とするマテリアルリサイクルや、廃プラスチックを油化して原料に戻すケミカルリサイクルなど、さまざまなリサイクル技術を通じて循環型社会の実現に尽力しています。今回は株式会社CFP CR事業部GMの福田健志さまに、リサイクルのこれからについてお話を伺いました。
そもそもリサイクルにはどんな種類があるの?
あわいひかり:お忙しいところお時間をいただき、ありがとうございます。あわいひかりでも記事として取り上げさせていただいた香川県観音寺市の食品会社である株式会社ちぬやさまから、「リサイクルに関しておもしろい取り組みをされている企業がある」と、株式会社CFPさまをご紹介いただきました。
まず、ちぬやさまとはどのようなお仕事でご一緒されているのでしょうか?
福田さま:こちらこそ弊社の事業を取り上げていただいてありがとうございます。ちぬやさまとの業務についてですが、ちぬやさまが商品を製造するために使っている原料が入っているポリ袋などをケミカルリサイクルすることで、産業廃棄物の処理時のCO2排出量の削減に協力させていただいています。
あわいひかり:ちぬやさまからもケミカルリサイクルについては、以前にお話を伺いましたが、ケミカルリサイクルとはどのようなリサイクル方法なのでしょう?
福田さま:現在、廃プラのリサイクルには3つの方法があります。1つ目は、廃プラを燃焼させて発生する熱エネルギーを回収し、電力や熱に利用する「サーマルリサイクル」。2つ目は、廃プラを破砕、洗浄、溶融などをして、再度プラスチック製品の原料として利用する「マテリアルリサイクル」。3つ目は、廃プラを化学的に分解し、元のモノマーや他の化学物質に戻して新たなプラスチック原料として再利用する「ケミカルリサイクル」です。
あわいひかり:CFPさまでは、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルのハイブリッドリサイクルを推進されているということですが、それぞれのリサイクルのメリットやデメリットについて教えてください。
福田さま:サーマル、マテリアル、ケミカル、それぞれのリサイクル方法にはメリットもありますし、デメリットもあります。それらを上手く組み合わせることで、理想的な循環型社会が実現するとわたしたちは考えています。
お話を元に戻すと、サーマルリサイクルのメリットは、廃棄物の量を大幅に削減できることです。また、エネルギー源として活用が可能です。その反面、燃焼時にマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルと比べると多くのCO2が発生し環境負荷が問題視されています。資源の循環利用という面では直接貢献することはできないというデメリットがあります。
つぎにマテリアルリサイクルですが、廃プラを物理的に処理して、再度プラスチック製品の原材料として再利用することができます。そのためには、プラスチックを分別、洗浄、ペレット化する必要がありますが、資源を循環利用するという点ではサーマルリサイクルより優れていて、新たなプラスチック原料の使用量を削減できるメリットがあります。しかし、デメリットとして品質の劣化が起こりやすく、高品質な製品への再利用が難しい場合があります。また、分別や洗浄に手間とコストがかかるのも否めません。
最後にケミカルリサイクルですが、リサイクルしても品質の劣化はなく、バージンプラスチックと同等の品質を担保することが可能です。その反面、技術的に複雑で、設備投資や運用コストが高いという問題や、エネルギー消費量が多い場合があるのも事実です。しかし、ケミカルリサイクルはサーキュラーエコノミー(循環経済)に大きく貢献できるリサイクル方法として注目を集めており、弊社以外でも大手企業が実用化に向けて準備を進めているところです。
ケミカルリサイクルが、これからの廃プラのリサイクルを変える。
あわいひかり:最先端の廃プラリサイクル技術である「ケミカルリサイクル」を大手の企業に先駆けて実用化されたCFPさまですが、いつからケミカルリサイクルに注目されていたのでしょう?
福田さま:弊社は2003年に設立されたのですが、2010年にはグループ企業であるリサイクルエナジーという会社でケミカルリサイクルを開始し、2014年に廃プラを溶解処理して油化する装置の特許を取得しました。
あわいひかり:そんなに早くからケミカルリサイクルを行われていたのですね。
福田さま:当初は1日4トンほどしかリサイクルできなかったのですが、油化装置を大型化して2023年に1号機、2024年に2号機を稼働させたことで、現在は1日に30トンの廃プラを処理することが可能になりました。さらに2026年には3号機を稼働させ、1日に40トンの処理をめざしています。
あわいひかり:1日に30トンですか!比較的軽いプラスチック廃棄物の量を考えると膨大な量ですね。現在はどのようなところから廃棄物が持ち込まれているのですか?
福田さま:現在はPIR(ポスト・インダストリアル・リサイクル)と言って、商品が消費者に渡る前の段階、つまり企業さまから持ち込まれることがほとんどです。しかし、2026年の3号機が稼働し始めた後は、一般の生活者さまから出る廃プラの回収(PCR ポスト・コンシューマー・リサイクル)にも力を注いでいきたいと考えています。
あわいひかり:企業と一般生活者とでは廃棄物の種類も変わってくるのでしょうか?
福田さま:そうですね。企業から出る廃プラは、ほとんど同じ素材のプラスチックなのですが、一般生活者から出る廃プラは、さまざまなプラスチックの種類が混合するのでその対応を考えなくてはなりません。
あわいひかり:分別の手間や処理が複雑になってしまうんですね。
ケミカルリサイクルで廃プラが重質油分や軽質油分に化ける?
あわいひかり:リサイクルしても品質劣化が少ないプラスチック原料を作ることができるケミカルリサイクルですが、その工程を教えていただいてもよろしいですか?
福田さま:はい。はじめに廃プラ(フィルム、樹脂の塊、不織布など)を破砕します。次に、細かく砕かれた廃プラを押出機で反応釜に搬送します。窯の中で400℃前後に加熱された廃プラは気化しますが、それを冷やして液化します。液体でないと買い取ってもらえないのです。液体となった廃棄プラスチックは重油分と軽油分に分け、重油分は海外の石油精製及び石油化学メーカーに。そして軽油分は国内の石油化学メーカーに販売しています。その比率としては、重油6 :軽油4の割合です。
あわいひかり:廃プラが重質油や軽質油になるんですか!?その油はどのように利用されているのでしょうか?
福田さま:ケミカルリサイクルで生成される重質油や軽質油は車や発電機などにも使えるのですが、CO2削減の観点から、樹脂に戻すことが推進されています。
パラオ共和国では、流れ着いた海洋プラスチック等を油化して発電に使っています。
あわいひかり:そうなんですね!ケミカルリサイクルの可能性を見ました!
ところで、原料となる廃プラはどの程度リサイクルできるんですか?
福田さま:100%リサイクルすることが可能なんですよ。
あわいひかり:100%ですか!?
福田さま:はい、100%です!処理した廃プラの約80〜85%が油になり、10%がメタンやエタン、プロパンといったガスになります。そして、残渣はカーボンブラックの代替えとして使用することが可能です。
あわいひかり:廃プラが100%リサイクルできるなんて素晴らしいことですよね。
福田さま:そうですね。ゴミをゼロにするだけでなく、資源が少ない日本だからこそ、国内で循環させることがとても重要だと思います。
ケミカルリサイクルのこれから。
あわいひかり:廃棄プラスチックを100%リサイクルできるケミカルリサイクルですが、CFPさまとして、今後はどのような展開をお考えなのでしょうか?
福田さま:今後の課題としては、廃プラは軽いので積載効率が悪いんです。つまり、輸送費が高くついてしまうんですね。だから、処理できる拠点を各地に設けて、廃プラを地産地消することを考えています。具体的には、関東や中四国(岡山工場)と九州で処理することを検討中です。
あわいひかり:今後、メリットの大きいケミカルリサイクルは普及していくとお考えですか?
福田さま:はい。先ほどもお話ししましたが、大手企業さまもケミカルリサイクル事業に参入されていますし、近く稼働も予定されているということです。
また、CO2の削減効果で言いますと、ケミカルリサイクルはサーマルリサイクルの半分の排出量で済むとも言われていて、今後の廃プラのリサイクルの主役になると考えています。
あわいひかり:2026年の3号機稼働後は、一般生活者からの廃プラも回収するということですが課題などはありますか?
福田さま:そうですね。課題としては「塩素」がネックになると考えています。処理した重質油や軽質油などに塩素が多く含まれると販売できなくなってしまうんです。その塩素は、パッケージフィルムのインキなどに使われているものなんですが、これをどう処理するかが問題になってくると考えています。
また、雑多なものがカーボンブラックになっているので、タイヤなどに活用するのは難しいと考えています。しかし、製鉄会社さまでは加炭材や還元剤として使えるということなので、そこはクリアできそうです。
あわいひかり:今後、ケミカルリサイクルに参入する企業が増えることでの危機感などはありますか?
福田さま:もちろん大企業の参入は脅威ではありますが、今は日本でケミカルリサイクルが普及することが大事だと思っていますので、他社のプラントもうまくいってほしいと思っています。そして、何よりもCO2削減に向けて、より高度な循環型社会の実現に貢献することが、私たちの使命だと考えています。
あわいひかり:最後にケミカルリサイクルを推進していく上で、社会に要望などがあればお願いいたします。
福田さま:そうですね。これからケミカルリサイクルを推し進めていくには商品のパッケージや包装フィルムを作る企業さまにも協力していただき、ケミカルリサイクルしやすいフィルムやインキなどを選定していただけることをパッケージ業界全体で考えていただければと思います。
あわいひかり:現在、パッケージやフィルムのリサイクルについてさまざまな方法が検討されていますが、ケミカルリサイクルが資源の少ない日本にとってベストなリサイクル方法だと感じました。
また、地方の企業でケミカルリサイクルに対して、熱意を持って真剣に取り組まれている姿勢にとても感銘を受けました。本日は、本当にありがとうございました。
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取材・文
森本 未沙(海育ちのエバンジェリスト)