Series 連載
『間』と書いて『あわい』と読むことをご存知でしょうか。
現代ではあまり使われない大和言葉のようですが、次のような意味があるそうです。
『間』『あわい』とは、物と物のあいだ、距離、関係性。
『間』『あわい』とは、時間と時間のあいだ、時間的隔たり。
『間』『あわい』とは、人と人の間柄、相互の関係。
そこには単なる何かと何かの間という空間ではなく、意味のある空間が存在しているような気がしませんか?
このあわいひかりでは、人と自然と、今と過去と、誰かと誰かの間(あわい)について考えていこうと思います。
大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)
「鳥の目、虫の目、魚の目」で未来への道を探します
旅行や出張でどこかへ出かけると、ついつい足元の石を見てしまう癖があります。
道端の砂利や、古い建物の石材。 「この石はどこから来たんだろう」と眺めるのが、私のひそかな楽しみです。
重機なき時代の「地産地消」
特に、昔からある建物に使われている石には、その土地ならではの面白さが詰まっています。 重機も大きなトラックもなかった時代、人々は自分たちの周りにある石を使って、お城の石垣や港の灯籠を作りました。 いわば「石の地産地消」です。 だから、使われている石の種類を知ることは、その街がどんな地盤の上に立っているのかを知ることにもつながります。
私の住んでいる香川県でも、場所によって顔ぶれが変わります。
海沿いには「花崗岩(かこうがん)」が多く、お城の石垣や古い港に行くと、この白っぽい石によく出会います。
けれど、山の方へ向かうと景色は一変します。
讃岐山脈のあたりは砂岩などの「堆積岩(たいせきがん)」が広がるエリア。 観音寺市の山奥にある「豊稔池ダム」も、近くで採れる砂岩を積み上げて作られました。
あの独特のどっしりとした佇まいは、山の石を使っているからこそ、周囲の風景に馴染んでいるのかもしれません。
香川県丸亀市 丸亀城
香川県観音寺市 豊稔池堰堤
砂の色、岩の表情
石の違いは、景色の色まで変えてしまいます。 瀬戸内の香川県では、風化した花崗岩に由来する白い砂浜が多く見られます。
一方、静岡県の三保の松原は、富士山や伊豆半島の火山活動によって生成された玄武岩質の火山灰や溶岩が砕けて堆積しているため、黒っぽい砂浜です。
「砂の色が違うな」と感じる時、実はそのずっと奥にある山の成り立ちを感じていることになります。
香川県観音寺市 銭形砂絵
静岡 三保の松原 黒い砂浜
この面白さは、海外へ行っても同じです。
オーストラリアのメルボルンを歩くと、街中に黒い石があふれていることに驚きます。
中にはきれいに磨かれていてコンクリートのように見えるものもありますが、これは「ブルーストーン」と呼ばれる玄武岩。 ビクトリア州の近くでたくさん採れる石で、昔から道路の敷石や主要な建物に使われてきたそうです。
お隣の韓国・ソウルは、街全体が花崗岩の大地の上にあります。
ふと見上げると、白い岩肌が剥き出しになった山々が街を囲んでいます。 王宮の「景福宮」も、やはり花崗岩が主役。敷地内に敷き詰められた真っ白な砂も、花崗岩が風化して自然にできたものです。
ソウル 景福宮(キョンボックン)
メルボルン ブルーストーン
週末、石と対話する旅へ
こんなふうに、その土地には、その土地の石がごく自然に溶け込んでいます。 それは、何百年も前から続く、大地と人の暮らしの約束事のようなものかもしれません。
ちょっとした週末のお出かけや旅行のとき、ふと足元に転がっている石を見てみてください。 いつも歩いている道とは、きっと違う色や形をしているはず。 その小さなひと粒が、ガイドブックには載っていないその土地の長い歴史をそっと教えてくれるかもしれません。
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撮影
大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)