Series 連載

『間』と書いて『あわい』と読むことをご存知でしょうか。
現代ではあまり使われない大和言葉のようですが、次のような意味があるそうです。

『間』『あわい』とは、物と物のあいだ、距離、関係性。
『間』『あわい』とは、時間と時間のあいだ、時間的隔たり。
『間』『あわい』とは、人と人の間柄、相互の関係。

そこには単なる何かと何かの間という空間ではなく、意味のある空間が存在しているような気がしませんか?
このあわいひかりでは、人と自然と、今と過去と、誰かと誰かの間(あわい)について考えていこうと思います。

大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)

「鳥の目、虫の目、魚の目」で未来への道を探します

第 3 章 ジオと瀬戸内の海の幸

たくさんの島が点在する瀬戸内海は景色が良いだけでなく、様々な海の幸に恵まれた豊かな海でもあります。
マダイ、サワラ、アナゴ、タコ、エビやシャコ、そしてイリコの原料となるカタクチイワシなどなど瀬戸内で獲れる魚介類は多岐にわたります。


いろいろな種類の魚を育む瀬戸内海ですが、実はここにもジオが大きな影響を与えているのをご存知でしょうか。

多島海と呼ばれる瀬戸内海の地図をよく見てみると、島がたくさんあるエリアとそうでないエリアが存在することに気づきます。
島が多いエリアは”瀬戸”と呼ばれ、点在する島の影響で海が狭められ、潮の流れが早くなります。一方、島が少ないエリアは”灘”と呼ばれ、こちらは潮の流れも緩くとても穏やかな海が広がっています。

地図上で見てみると、それらは次のように位置しています。


※「瀬戸」と「灘」が交互に存在する瀬戸内海

流れが早い”瀬戸”では、海流の影響で海底に泥や砂が堆積しにくく、流れのある海や岩礁地帯や砂地を好む魚が多く獲れます。流れの速い海で育ったサワラやタイは、身が引き締まりとても美味しいと言われています。

一方で、流れの穏やかな”灘”では、遊泳力に劣るカタクチイワシなどの小魚がたくさん獲れます。また、細かい砂や泥の海底を好むエビやシャコが獲れます。
このように、瀬戸内の豊かな食文化の形成には、地形や地質の変化に富む瀬戸内海が大きな影響を及ぼしているのです。

では、このように”瀬戸”と”灘”が混在する瀬戸内海はどのように生まれたのでしょうか?
神戸大学の巽教授によるとそこには大きな地球の動きが関係しているそうです。

太古の昔に南海トラフから西日本に真北方向に沈み込んでいたフィリピン海プレートは、およそ300万年前に太平洋プレートにぶつかります。

太平洋プレートにぶつかったフィリピン海プレートは、太平洋プレートに押されるかたちで圧縮され、さらに西向きに引きずられます。
このときに地上ではシワが寄り、そのシワの山にあたる部分と、谷に当たる部分が誕生しました。
そのシワの山に当たる部分はその後淡路島をはじめとする瀬戸内海の島々になり、谷にあたる部分は燧灘をはじめとする灘になりました。
そして、それが今の瀬戸内海になっているのです。

このように、今私達が口にしている瀬戸内海の海の幸は、実はジオがもたらしていると言っても過言ではないかもしれません。

  • 撮影

    大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)