Series 連載
1000軒以上のカレーを食べ歩き、その多様性と歴史、店ごとの個性に魅了され続けてきた。
カレー屋の夢を実現する為、アルバイトの掛け持ちを始めたが挫折。挫折から学んだ経験と、環境への関心も持ち持続可能な未来のための取り組みをカレー業界でも促進したい。独自のスパイスカレーと瀬戸内の食材を焦点を当て連載していく。
安藤 真理子(アートディレクター)
木曜日、一週間の中で最もしんどい日。
仕事の疲れがピークに達するこの日は、まるで果てしない坂道を登るような感覚だ。
そんな日々に疲れた週末は、必ずカレーを食べに行く。
スパイスには免疫を高めるといった漢方と同じ効能があり、スパイスが私の心と身体を癒してくれる。私はいつだってカレーに元気をもらった。
カレー屋をやりたい。それは私の心の奥底にずっとある夢だった。
今、私はパッケージデザインの仕事をしている。繁忙期には業務が立て込むこともある。同僚の後輩のサヤカさんもいつも一生懸命で頑張っているが、季節の変わり目で体調が優れないようでとても心配していた。
そこで私は思いついた。
スパイスが効いたカレーを食べさせてあげたい。
私はすぐにカレーを作り彼女に食べてもらった。
仕事の昼休憩に振る舞ったスパイスカレーは、彼女のみならずみんなが美味しい美味しいと食べてくれた。
私はさらに思いついた。
スパイスカレーを提供する社員食堂を作りたい。
私の働く会社は本社が四国の瀬戸内に面した地域にあり、私の勤務先は東京営業所。
本社には立派な社員食堂があるのに、東京営業所には食堂がなく忙しい時にはお昼を食べていない社員もいる。
これはなんとかするべきだ。
私はすぐに上司を呼び出し、熱弁した。
返事はあっけなく「いいんじゃない、やってみなよ。」だった。そして仕事仲間にも相談して、私のスパイスカレー社員食堂構想はとんとん拍子で決まっていった。
いつも明るい飲み仲間でもある後輩のモエリさんと飲みに行き、カレー食堂の話をすると「なんでも手伝うよ」と言ってくれた。その言葉が嬉しく、朝までカレー食堂について二人で語り合った。彼女と話をしているうちにコンセプトが決まった。
1、四国本社の社員のみんなから余った食材をもらってカレーを作る
2、一週間で一番疲労が溜まる木曜日限定でオープンする
3、食堂の名前は「木曜日はせとうちカレー」
ある木曜日、お昼の時間を共に過ごすマホさんの元へ高知県の暖かな風が運んできた贈り物があったという。それは彼女の母からの手紙とともに送られてきた文旦だった。しかし、1人暮らしの彼女は文旦を食べきれず困っていた。
果物が無駄になってしまうのは忍びない。
そこで彼女は仕事仲間や友人に文旦を分け与えることを決めたのだ。
マホさんは私に声をかけてきた。
文旦食べませんか?
そこで思いついた。
文旦を、カレーに使ったらどうだろう?
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文・撮影
安藤 真理子(アートディレクター)