Series 連載
海辺などのプラスチックごみを回収してがんばって映え写真に昇華して成仏させた上で廃棄処分する、それが本企画「映えプラ」のコンセプト。最終的にこの企画が実行不可能になる(=プラごみの消滅)ことを目指してます。道のりは長い。しかしこれこそハチドリのひとしずく。志とクリエイティビティの融合をお楽しみください。
矢野 豊(名映えプレイヤー)
1984年1月17日生まれ。香川県出身、在住のデザイナー。おもしろいこと、イケてるデザイン、怖い話、カレー、ゴジラが好き。
全国津々浦々の映えプラ読者のみなさん、お待たせしました。映えプラです。
前回の投稿が5月ですから、いやはや夏をすっ飛ばしてもう秋…なんでしょうか。朝夕は幾分過ごしやすくなったとは言え、日中の暑さは今なおデンジャーゾーン。なんならギアを上げてきてる感すらあります。まあそうこう言っても季節は巡るわけで、遠くない未来、今度は寒い寒いと言ってるのです。滑稽なものであります。
さて今回の映えプラポイントも当たり前のように有明浜なんですが、今回はバックストーリーがありますのでそちらを少々。
去る8月24日、われらあわいひかり編集部主催のイベント、「ビーチクリーン&海ごみ講座」が行われました。簡単に説明すると、海浜清掃をして、その後海ごみについて学ぶというイベントです。場所は観音寺の有明浜、講師にはNPO法人アーキペラゴ副理事長 森田桂治さんを招聘。映えプラではいつも「見つけたごみを無心で拾う」スタイルですが、このビーチクリーンでは拾った場所やごみの種類を記録し、分析を交えるスタイルです。むむ、ついに映えプラもアカデミック領域に踏み込んで、ゆるい空気から卒業する日が来たのか…。そう思われたあなた、違います。
この「ビーチクリーン&海ごみ講座」と映えプラは別枠で走ってまして、その日わたしは(素人)カメラマンの任でイベントに参加してました。なのでコラボ企画として映えプラも!とはいかず、せっかく集めたごみもごみとして回収されてしまいました。そんな「ビーチクリーン&海ごみ講座」の記事はまた後日公開されますので、そちらもお楽しみに。
話戻りまして、じゃあ映えプラはどうなったんやという欲しがりさんにお答えすると、もちろんやっております。ごみ、集めました。妻が。
わたしがカメラマンとして必死に撮れ高を確保している間、同じくイベントに参加していた妻が集めてくれてたんですね、海ごみを。その日はまだまだ残暑厳しい真夏日、せっせせっせとわたしのためにごみを集めてくれた妻を思うと…うっ(目頭をぐっと押さえる)。
そんなこんなでごみは確保できたんですが、終日忙しかったため即映えプラはできませんでした。なので一旦ごみは持ち帰り、後日作品作りといういつぞやもやったシステムを採用したのです。
ではここから作品作りのパートに移ります。
妻が集めてくれたごみを見ていきましょう。どれどれ。
ざっと広げた感じではあまり映えそうなものは見当たらないですね…細かく見ていきます。
小さいスコップ。潮干狩りなんかで使ってたら波にさらわれた、とかでしょうか。まだ使えそうです。
まな板? 色といい形状といい、映え度は極めて0に近いです。
靴のソール。こちらも映え度は低いですが、形状としてのポテンシャルはあります。使いようによっちゃ化けるかも。
肥料の袋。あまり海とは結びつかないですが、どういった流れでたどり着いてるんでしょう?
多分グリースの容器。船舶用でしょうか。
金鳥の夏、日本の夏。よく見ると「ン」めっちゃ小さいですね。
アタック洗剤。これ、中身「ごと」です。ごとって珍しいです。もったいないですが中身を使う勇気はありません。
ライター。この先の長いタイプは花火なんかでよく使いますね。ということはもしや…
出たよ〜花火の外装!だから遊んだ後はちゃんと持ち帰って捨てなさいと言ってるでしょうに!(第5映え参照)
とまあ他にもいろいろありますが、目立つところではこんな感じです。色、サイズ、形状など、映えポイントで言うとやや控えめ。「ごと」というインパクトではアタック洗剤はピカイチです。さてさてでは組み立てていきますか。
(あーでもないこーでもない…)
タイトル「少年時代」
おくりびとネーム : Yano
作品に対して作者自ら解説するのは野暮な気もしますが、感じろというのも酷なので解説します。
作品のアクセントになっているキンチョール。その左にあるライター。目線を下にずらすと、風にはためく花火の袋。これらが表すものはズバリ「スプレー式火炎放射器で花火に着火を試みる悪ガキたち」です。危険なので絶対にやってはいけませんが、つい好奇心やノリでやってしまうのが少年という生き物ではないでしょうか。そんな愚かしくも愛すべき少年時代をこの作品で表現しました。
作品下部をご覧いただくと、中身のつまった肥料袋が。中には集められたごみがつまっていて、「せっかく集めてくれたごみをムダにしないように」という配慮が見てとれます。あと西に傾く陽光を捉えることで、終わりゆく夏の寂しさも内包しています。う〜んセンチメンタル。
そんなセンチメンタルを感じたところで、今回の映えプラ、お開きといたします。次回こそは「有明浜の呪縛」から逃れられるのか…?
ではまた他日。
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取材・文
矢野 豊(名映えプレイヤー)