Report レポート
最近、たまに印刷物やパッケージに付いているのを見かける「GPマーク」。これってなんのマークなの?って気になっている人もいるかもしれません。
そこで、あわいひかりでは「GPマーク」について、マークを考案し、管理している日本印刷産業連合会へ取材してきました。
あわいひかり:この度は、取材を快くお引き受けくださってありがとうございます。はじめに、GPマークを考案されて管理をされている日本印刷産業連合会についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
内藤:一般社団法人 日本印刷産業連合会は、1985年に印刷産業10団体が結集し、産業の一層の発展と生活文化の向上に寄与することを目的に設立され、各団体に加盟する印刷関連事業者は、現在、合計で約6,400社を数えております。当連合会では「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を事業活動の柱とし、加盟している10団体とともに、「地方創生」「ダイバーシティ」「コンプライアンス」「労働安全衛生」「環境マネジメント」などを推進し、印刷産業の価値の拡大と、情報・生活文化の担い手としての社会貢献に向けて、その役割と責任を果たしていこうと考えています。
あわいひかり:持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みの一環として、GPマークは誕生したのでしょうか?誕生した経緯についてお話をお伺いさせてください。
内藤:循環型社会形成推進基本法およびグリーン購入法が2000年に相次いで制定され、製品やサービスに対する環境配慮の社会的要求が高まりました。それを受け、日本印刷産業連合会(以後:日印産連)は、2001年に印刷産業界の環境自主基準「日印産連「印刷サービス」グリーン基準」を制定しました。
一方、ISO14001発行を契機に策定された「環境活動評価プログラム」(環境省)は「エコアクション21」となり、第三者等の認証を受ける環境マネジメントシステムの取得は環境に配慮した事業活動の証となるなどの動きがありました。
このような背景の中、日印産連は2006年に、中小事業者でも取り組める印刷会社の環境マネジメントシステムとして、「日印産連「印刷サービス」グリーン基準」をもとにした印刷工場と印刷製品の総合的な環境配慮を推進するグリーンプリンティング認定制度(略称: GP認定制度)を創設しました。
GPマークは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みの一環として誕生したのではなく、それまでの取り組みがSDGsにも合致しました。
あわいひかり:GPマークが誕生するまでの環境印刷を取り巻く環境はどのようなものでしたか?
内藤:GP認定制度(以後GP認定)が創設されるまでは、大手印刷会社などの一部を除いて、ほとんどの会社はISO14001等のマネジメントシステムの認証も未取得で、何らかの環境に対する取り組みが求められていました。そのような状況の中、改正大気汚染防止法により2006年からVOC(揮発性有機化合物)の規制が開始され、早急な対応が迫られることになりました。
あわいひかり:GPマークにはどのような意味や思いがあるのでしょうか?
坂本:GPマークは、瑞々しい緑の若葉をイメージさせるデザインを用いて”Green Printing”の頭文字「G」と「P」、そして「印刷」の「印」の文字を模しています。若葉が成長して伸びていくイメージで環境に配慮した制度であることを示しています。
あわいひかり:なるほど。このマークには、そういった意味があるんですね。では、そのGPマークを表示するにはどのような基準があるのでしょうか?
坂本:GPマークを印刷製品に表示するには、製造する印刷工場がGP認定を取得していることが条件となります。工場がGP認定を取得するためには、「日印産連「印刷サービス」グリーン基準」のうち、会社としての取り組みを含め、工程ごとの基準を満たす必要があります。認定工場が製造した製品で使用する紙・インキ等が、環境配慮基準を満たしたものにGPマークを表示することができるのです。製品に表示するGPマークには、☆ワンスター・☆☆ツースター・☆☆☆スリースターの3区分があり、製造工程と印刷資材の環境配慮の度合いが一目で分かるようになっています。
あわいひかり:GPマークの上についている星は、環境配慮の度合いを示していたんですね。そのGPマークを採用することで、ブランドオーナーはどのような効果が期待できるとお考えですか?
坂本:GPマークを表示することで、環境に配慮した調達を行っていることがアピールできます。つまり、企業活動を行っていく上で義務ともいえる持続可能な開発目標 (SDGs)の達成に寄与するGPマークの採用製品が増えることで、その企業は社会的にもますます認められていくと考えています。
あわいひかり:では、GPマークの表示を推進することで印刷会社にはどのような効果が期待できますか?
内藤:GP認定を取得することで、環境に配慮した活動を行っている印刷会社であることをアピールできます。印刷製品に表示されるGPマークには印刷会社の認定番号が付記されていますので、どこの印刷会社で製造されたものかを検索できます。言ってみれば、印刷物のトレーサビリティですね。クライアントだけではなく幅広い生活者に対して、環境に配慮した印刷を行っていることをアピールできますし、付加価値の高い製品としてGPマークと認定番号を表記すれば、自社技術の優位性を示す証にもなります。また、GP認定には職場環境に対する項目もありますので、これを推進することで、社内の5S(清掃、清潔、整理、整頓、躾)の徹底による品質の向上、ロス・ミスの削減、従業員同士のコミュニケーション活性化、モチベーション向上にも効果があると考えています。
あわいひかり:GPマークを印刷製品に付けることで、生活者にはどのようなメリットがあるでしょう?
坂本:通常、印刷製品の環境配慮の有無を知ることは困難ですが、GPマークによって環境に配慮した印刷製品であることが判断できます。なので、少しでも環境に配慮した商品や製品を調達したいとお考えのお客様には、GPマークが選ぶ一つの基準になるのではないでしょうか。
あわいひかり:これからは生活者も環境に配慮した製品を、より積極的に購入する時代になると思いますし、GPマークがさらに普及すれば購入の指針になりますね。現在、GPマークの普及にあたっての課題や問題点は感じていらっしゃいますか?
内藤:ポスター等でデザイン的にそぐわなかったり、シール・ステッカー等で表示するスペースがなくてGPマークの表示が難しいものがあります。また、GP認定を取得している工場がまだ少数のため、マークの認知・普及が十分に進んでいない状況です。さらに、二酸化炭素排出量削減の評価、認定取得効果を明確化するための基準改定を含めた認定制度の見直しも課題となっています。今後、これらの課題を解決し、GP認定制度・GPマークのさらなる普及拡大を図っていきます。GPマークの普及に関しては、グリーンプリンティングPR大使として、放送作家・脚本家であり、京都芸術大学副学長でもある小山薫堂氏をお迎えして、トークショーなどにも出演していただく等、“GPの顔”としてご活躍いただいております。昨年は小山氏のラジオ番組『FUTURESCAPE』にGPコーナーを1ヵ月設けていただき、ゲストとしてGP関係者も出演させていただきました。また、GP環境大賞を制定し、GP認定を受けた印刷会社で商品や包材などを調達されたクライアントの中からより多くのGPマークを採用した企業を、環境配慮型企業として表彰することも行っています。
あわいひかり:GPマークの普及には、まだまだこれから取り組まなければいけない課題があるということですね。
では、今後GPマークをどのようにどんな商品に展開したいとお考えですか?
坂本:一般生活者に身近な印刷物、例えば新聞折り込みチラシやスーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売されている食品パッケージ等に採用されることを期待しています。特にパッケージに関しては、GPマークは紙だけでなくフィルム包材にも表示できますので、今後大幅に採用が増加していくと確信しています。
あわいひかり:そうですね。もっと生活者の身近な商品に展開していくことで、さらなるGPマークの普及が行えると思います。さて、これからの印刷にどのようなことを期待されますか?
内藤:デジタル化が進んでも紙やフィルム等の印刷物がなくなることはありません。その中で、品質や価格だけではなく環境配慮という側面に価値を見出して、より多くのクライアント・生活者がGP認定制度を理解し、選ばれる印刷会社が増えていくことを期待します。
あわいひかり:最後になりますが、地球環境にとって、理想的な商品パッケージとはどのようなものだとお考えでしょうか?
内藤:パッケージに関しては、4つの観点があります。
まず、パッケージ自体の素材や製造に使用する資材・機材等の省資源化です。同じ素材であれば薄い素材、少量のインキや樹脂で機能する製品のほうが省資源で地球環境の保護につながります。
2つ目は資源循環の観点です。パッケージは内容物を使用した後、ほとんどのものが廃棄されます。廃棄物がリサイクルできるかどうかは重要なポイントです。焼却して熱回収するよりもフィルム原料や古紙として再生することが望まれます。
3つ目は素材の製造から廃棄に至るまでの二酸化炭素排出量の観点です。いわゆるライフサイクルにおいて、気候変動要因となる二酸化炭素の排出量を減らすことが環境負荷低減に寄与します。印刷会社では省エネ型の印刷機を使用するなど効率的な生産によって使用エネルギーを削減することは勿論ですが、加えて二酸化炭素排出量が少ない再生可能エネルギーの使用が求められます。さらに自社のみならずサプライチェーンにおける削減についても取り組みが必要となっています。
最後に、化学物質の管理があげられます。印刷工場では、有機溶剤や酸・アルカリ等の化学物質を使用しますので、工場内から化学物質が排出されないように管理するとともに、廃棄物に関しては適切な処理を委託する必要があります。
以上のことを踏まえたパッケージが、地球にやさしいパッケージとしてこれからの社会に認められていくのではないでしょうか。
あわいひかり:本日は、お忙しい中、お話を伺わせていただいてありがとうございました。GP認定制度とGPマークについて、理解することができました。なお、GP認定制度とGPマークについて、もっと詳しく知りたい方は日本印刷産業連合会のサイトをご覧ください。
https://www.jfpi.or.jp/greenprinting/
あわいひかりでは、これからも『あっ!』と驚く新素材や『なるほど!』と感心するエコな素材はもちろん、環境にいいことに取り組む企業や団体、人をご紹介していきます!
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取材・文
森本 未沙(海育ちのエバンジェリスト)