Series 連載

『間』と書いて『あわい』と読むことをご存知でしょうか。
現代ではあまり使われない大和言葉のようですが、次のような意味があるそうです。
『間』『あわい』とは、物と物のあいだ、距離、関係性。
『間』『あわい』とは、時間と時間のあいだ、時間的隔たり。
『間』『あわい』とは、人と人の間柄、相互の関係。
そこには単なる何かと何かの間という空間ではなく、意味のある空間が存在しているような気がしませんか?
このあわいひかりでは、人と自然と、今と過去と、誰かと誰かの間(あわい)について考えていこうと思います。

大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)
「鳥の目、虫の目、魚の目」で未来への道を探します

SNSで話題になり一躍香川県観音寺市の観光名所になった高屋神社の『天空の鳥居』。
高屋神社は香川県西部を南北に伸びる七宝連山のひとつ稲積山(標高404m)の山頂に位置し、そこからは三豊平野に広がる観音寺市の町並みと穏やかな燧灘を鳥居越しに一望することができます。
稲積山の峰の先端からの眺めは、鳥居がまるで空に浮かんでいるかのように見えるため、『天空の鳥居』と呼ばれています。
この高屋神社へは自動車を使って簡単にアクセスすることもできるのですが、今回はあえて麓から自分の足で参道を登ることで、この絶景の秘密に迫ってみたいと思います。
山頂へ伸びる参道は高屋神社本殿脇にある駐車場からスタートします。
1月ということもあり初詣客も多く、駐車場は混み合っていました。

今回の調査のお供は香川県の地質図です。
これによると、稲積山の地質は麓から山頂にかけて、花崗岩→凝灰岩→安山岩と変化していくようです。この変化について気にしながら登っていこうと思います。

出典 産業技術総合研究所 地質調査総合センター https://www.gsj.jp/Map/JP/geology4.html
スタート地点から山頂を見上げると、山肌にはゴツゴツした岩が見えました。
一方、足元には花崗岩が風化した”真砂(マサ)”が広がっていました。地質図通りですね。


”真砂(マサ)”の上を歩き、参道へと進んでいきます。
参道に差しかかると急に勾配がきつくなります。
歩き始めて5分、この企画を考えたことをもう後悔し始めました。
とはいえ、上まで登らないと記事がかけないので、登山用のストックを頼りに登っていきます。
参道は急ではあるものの整備されていてコンクリート敷です。しんどい割には肝心の地質がさっぱり分かりません。

しばらく進むと参道(というか、ほぼ登山道なので、以下登山道とする)はつづら折りになり、標高を稼いでいきます。

相変わらず足元はコンクリートなので足元の様子は伺えず、仕方なく山側の斜面の地質に注目しながら進んでいきます。
進むにつれ、斜面の色は徐々に灰色に変化してきます。どうやら風化した凝灰岩の土壌に変わったようです。
ただ素人目には、どこかで花崗岩質の土から凝灰岩質の土に変わったのか、その変化点は分かりませんでした。

つづら折りの登山道はまだまだ続きます。
いつの間にか足元のコンクリートはなくなり、むき出しの土に変わっていました。これで土壌の様子がよくわかります。
地質図の表示が凝灰岩から安山岩に変わる頃、足元には安山岩と思われる岩がゴツゴツと顔を出すようになってきました。斜面の崖にも大きな岩が沢山埋まっています。

進むにつれて、登山道はどんどん岩がちになっていきます。
しっかりしたトレッキングシューズを履いてきて正解です。
こんなに険しいとは知らず『ちょっとそこまで初詣に♪』的な服装で来てしまった人もチラホラいて、とても辛そうです。

とても険しいつづら折りの登山道は五丁石を目印に終わります。
そこからは、これまでの急な登山道が嘘のように、なだらかな斜面に変わります。
どうやら、尾根を覆う安山岩の上に出たようです。
平らになった登山道は、安山岩が風化した土に覆われていて、ところどころで岩が顔を出していました。

なだらかな斜面をしばらく進むと、突然高屋神社の石段が現れて驚きます。
今歩いている登山道が高屋神社のへの参道だったことをすっかり忘れていました。(それくらい山です)

ヘロヘロになりながら石段を上がり、鳥居をくぐって高屋神社の本宮に到着です。
ここまで約1時間。年末年始の運動不足の体にはいい刺激になりました。

山頂からは三豊平野に広がる観音寺市の町並みが一望でき、穏やかな燧灘の先には四国中央市の製紙工場群が見えました。
よく晴れた日にはその先に、西日本最高峰の石鎚山も見えます。
ということで、本日のまとめです。
『天空の鳥居』の絶景の誕生はおおよそ次のような流れだと思います。
(私の想像です。ジオに詳しい方ぜひアドバイスをください)

風化した花崗岩と風化に耐えた安山岩が生み出した特徴的な地形の山と、その山の麓で暮らす人々が山を信仰し、そこに神社(鳥居)を建てたことで生まれた奇跡的な景色と言えるでしょう。
稲積山の天空の鳥居には、少し険しいところもありますが、往復2時間もあれば行って帰ってこれます。
足元だけ少ししっかりした靴を履いて、ぜひ一度登ってみてください。
山といっても標高わずか404mです、気温が上がる夏場は避けて秋から春に登るのがお勧めです。

高屋神社へのアクセスについてはこちらまで
観音寺市観光協会
https://kanonji-kanko.jp/news/takaya-access/
-
撮影
大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)