Series 連載

1000軒以上のカレーを食べ歩き、その多様性と歴史、店ごとの個性に魅了され続けてきた。
カレー屋の夢を実現する為、アルバイトの掛け持ちを始めたが挫折。挫折から学んだ経験と、環境への関心も持ち持続可能な未来のための取り組みをカレー業界でも促進したい。独自のスパイスカレーと瀬戸内の食材を焦点を当て連載していく。

安藤 真理子(アートディレクター)

第6話 ブロッコリーの向こう側

寒さも一段と増してきた頃、本社のアカネさんからダンボールが届いた。
青々とした立派な房がぎゅっと詰まったブロッコリー。
ふわっと土の香りがした。
これは畑で太陽を浴び、雨を受け、アカネさんご家族に大切に育てられたものだ、
と感じアカネさんに詳しく話をきくことにした。

農家のリアルな苦労。野菜は、思い通りに育たない。


私たちはスーパーで形のそろった野菜を手に取るけれど、その裏には農家さんの見えない苦労がある。
たとえば、雨。
適度であれば恵みだが、降りすぎると野菜の成長スピードが爆発的に上がってしまうらしい。
ブロッコリーは収穫が少しでも遅れると大きくなりすぎてしまい、市場価値が落ちてしまう。
さらには出荷すらできず、廃棄せざるを得ないことも。
「もったいないなぁ」と簡単に口にできるが、それを防ぐための努力がどれだけあるのかは、想像もできない。

アカネさんの家では、「土作り」にとことんこだわっている。
いい野菜を作るには、まずいい土が必要だから。
そのために牛糞を混ぜ、1年、2年、3年とかけて土の質を整えていく。
そんなに時間がかかるのかと驚くけれど、美味しい野菜を作るにはそれくらいの手間が当たり前なのだろう。

またアカネさんの祖母は、生産者の勉強会に必ず参加しているらしい。
そこで農家同士が情報を交換し、どんな病害が流行っているか、どう対策すればいいかを学ぶ。
困ったことがあれば、JAの人や他の農家に相談できる。
孤独になりがちな農業でも、つながることで強くなる。
そうやって、より良い野菜を育てるための努力は続いていくのだ。


今回はせっかくなら野菜に合わせて変化をつけた副菜として活躍してもらおうと決めた。
ブロッコリーのサブジ、大根のウールガイ、にんじんのアチャール。
スパイスと野菜の組み合わせがたまらない鮮やかな料理たちだ。
そのままでも美味しいが混ぜることで何度も味の変化を楽しめるこれがカレーの醍醐味だ。


出来上がった副菜をカレーと一緒に並べる。
ブロッコリーのサブジは緑が鮮やかで、ウールガイの大根は酸味が少し効いた独特のクセになる味に。
にんじんのアチャールは甘味と酸味が絶妙で、アクセントにカシューナッツを。


赤い皮のジャガイモはカシミールカレーの中に入れた。
存在感もしっかり残るよう煮込み過ぎないよう気をつけた。

カシミールといえば激辛が基本。
でも辛いのが苦手な人も多いので、いつもよりはちょっと辛い程度にしておこう。


そんな中、今日も二日酔いの上司は言う。
「もちろんカシミールカレーなんだから辛いよね?」
上司は激辛好きでキャロライナリーパーを持ち歩くほど辛党だ。
特別に激辛カシミールを作って出した。
「やりやがったな。。。」


「野菜いっぱいで美味しい〜」と誰かが言う。
「私はブロッコリーのサブジ好きかも」
その言葉たちの裏側には土を耕し天気と向き合い、学び続ける農家の人たちがいる。
そのことを知るだけで、いつもの食卓が少しだけ特別に思える。

さて、次はどんなカレーを作ろうかな。
また私の元へ素敵な食材の知らせが届いていた。

  • 文・撮影

    安藤 真理子(アートディレクター)