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廃棄物を削減して、経費も削減! リサイクルの常識を覆す 味のちぬやの取り組みとは?

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2025年2月に表彰式が行われた「第2回かがわプラスチック・スマート大賞」。その中でプラスチックスマート賞(優秀賞)を受賞された、香川県三豊市に本社を置く「味のちぬや」。製造部工務課主任として排水設備、廃棄物などをご担当されている坂田陵太郎さまに、受賞した取り組みについてお話をお伺いしました。

あわいひかり:本日はお忙しいところ、お時間をいただいてありがとうございます。
また、プラスチックスマート賞の受賞、おめでとうございます。



坂田さん:ありがとうございます。弊社では、2019年から3R活動+Tプロジェクトを発足して、環境に対する取り組みを行ってきました。その成果の表れだと思い、大変嬉しく思います。

あわいひかり:当初はどのような取り組みをされていたのですか?

坂田さん:それまでは生産でさまざまな取り組みを行って品質向上や効率化などに取り組んでいたのですが、廃棄にはなかなか目が届いて?いなかったんです。当初は、何をしていいかわからなかったのですが、まず処理量が大きいものやSDGsの観点から、取り組んでいくことにしました。



あわいひかり:具体的にはどのようなことでしょう?

坂田さん:従来は、製造時に発生する廃棄残渣(イモ・廃棄コロッケ)を養豚業者さんに小口で渡していました。それを、廃棄物とフードロスの削減という観点からより規模の大きい養豚業者さんと契約して、9割ぐらいは処理できるようになりました。これによって99.5%のリサイクル率になったんです。農林水産省が定める食品製造業での再生利用の目標は、2024年度までに95%としていたのですが、それを前倒しで達成することができました。

あわいひかり:99.5%!それはすごいリサイクル率ですね!

坂田さん:はい。しかし、それだけに満足せず、次に目をつけたのが「廃プラ」系の廃棄物です。これが今回受賞させていただいた取り組みにつながっています。

あわいひかり:コロッケを製造するための原料が入っているプラスチックの袋などを、産業廃棄物処理時のCO2排出量削減のために工場内での分別方法を工夫してケミカルリサイクルを開始。また、輸送時のCO2排出量削減の為、圧縮機の導入やパレット積載方法を工夫し、配送効率を向上させたというのが今回の受賞の内容でしたね?具体的には、どのような取り組みを行ったのですか?

坂田さん:はい。弊社で出る廃プラは、主にパン粉の袋をはじめ、製造過程や梱包過程での中敷き、PPバンドのカス、PEヒモなどで、以前は固形燃料としてサーマルリサイクルをしていました。熱エネルギーとしての再利用はしていたのですが、CO2排出量削減には貢献できていないのが課題でした。しかし、2023年に株式会社CFPさんに協力を仰ぎ、サーマルリサイクルをケミカルリサイクルに切り替えたことで、CO2排出量削減に貢献できるようになりました。また、ケミカルリサイクルでは廃プラをナフサの状態まで戻すので、燃焼するのではなくプラスチック原料として再利用ができるようになりました。

あわいひかり:ケミカルリサイクルとは、どのようなリサイクル法なのでしょう?

坂田さん:ケミカルリサイクルは、廃棄物を化学的に分解して元の化学成分に戻し、再び原料として利用する方法です。株式会社CFPさんが日本での先駆けでして、そののちに複数の企業がケミカルリサイクルに参入しています。

あわいひかり:ケミカルリサイクルを行うメリットはあったのでしょうか?

坂田さん:ケミカルリサイクルで処理した廃プラスチックは年間で約79tになり、サーマルリサイクルと比較すると、年間160t-CO2ものCO2排出量削減につながりました。CFPさんに廃プラを引き取っていただくことで弊社としては廃棄物を減らすことができ、結果的に廃棄費用を軽減することができました。

あわいひかり:廃棄物を資源として販売し、化学的にリサイクルしたものを原料として販売する!素晴らしいリサイクル方法です。導入するにあたって、何か課題はありましたか?

坂田さん:工場内で、廃棄物が混ざり合っていたので、分別をすることが課題でした。300人以上いる社員すべてに周知して、意識的に分別してもらわなくてはいけませんからね。そこで、「ケミカルリサイクル用」「混合ごみ用」の2種類に廃棄物を分けることを決定し、すべての工程にごみ箱を2つ用意しました。
次に課題となってのが、運搬方法です。リサイクル工場のある岡山県まで運送しないといけないので、体積を小さくさせる必要がありました。そこで、圧縮機を導入し、廃棄物を圧縮して運送効率を高めることにしました。また、トラック1台分の廃棄物を貯めるのに1か月半ほどかかるため、残渣が残る廃棄物は冷蔵庫の中に専用の棚を設置するなど工夫をして保管しています。



あわいひかり:なかなか手間がかかるのですね。

坂田さん:香川県から岡山県まで最大8t(現状7t)を運搬しているのですが、運搬方法を効率化することで、大幅な運送コストの削減につながりました。

あわいひかり:なるほど!素晴らしい取り組みです。

坂田さん:もちろん運送コストだけでなく、廃棄物処理のコストも軽減しているので、初期投資した圧縮機の購入や棚の設置などは、開始2年ほどで償却することができています。

あわいひかり:廃棄物と一緒に、経費まで削減できているなんていいことずくめですね!

坂田さん:そうなんです。また、廃棄物をサーマルではなく、ケミカルでリサイクルする取り組みは、お客さまへのPRにもなっていて、環境問題に積極的な企業からは高く評価していただいています。

あわいひかり:今後の課題やこれから取り組もうとお考えのことは?

坂田さん:そうですね。弊社が販売している商品のパッケージにはインキが使われていることから、ケミカルリサイクルができていません。それをなんとかしたいと考えています。
また、コロッケなどの廃棄残渣は、飼料や廃棄物処理業者でメタン発酵されています。そのメタン発酵を自社で行えれば電力として利用することができるのですが、今の量では採算が取れないのが問題ですね。メタン発酵は電力と合わせて液体肥料も生成しますが、それをジャガイモを栽培している北海道ちぬやファームに提供すれば循環型企業として面白いのではないかとも考えています。

あわいひかり:実現するとすごく面白いですね!

坂田さん:当初は30人ほどで始まった3R+Tプロジェクトですが、みんなで環境への影響を学び、有限である資源の有効活用に取り組んできました。気づけば、廃棄物の再資源化が大幅に進み、環境改善とともに経費削減の成果が出るようになりました。
また、従業員の意識も変わり、作業工程の中にも積極的な改善が見えるようになったことも成果の1つだと思います。従来の考え方に捉われない新しい価値の発見や、感度よくアンテナを張っておく大切さ、成果を分析して次へ繋げる創意工夫を行うきっかけとなりました。今後も改善を進め、それぞれの部署や個人個人で高い意識を持って企業価値を高める努力をしていきたいと考えています。

あわいひかり:今後の活動にも注目させていただきます。本日は、本当にありがとうございました。


  • 取材・文

    森本 未沙(海育ちのエバンジェリスト)