Report レポート

プラスチック問題の解決に 真っ向から取り組む 若者たちの実態に迫ってみた!

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GPTY(ジプティ)とは、Global Plastic Treaty Youth Initiativeの略で、実行力のある国際プラスチック条約を求める若者たちの組織です。国際的に法的拘束力を持つプラスチック条約の策定に向けて、日本政府はもちろん世界に若者たちの声を届けるため、効果的な政策提言や国際会議へのオブザーバー参加、啓発活動などを積極的に行っている団体です。その代表を務める桑野渚さんに、GPTYの活動内容やその役割をはじめ、環境問題やプラスチック問題に興味を持ったきっかけなどをお聞きしました。



あわいひかり:今日はお忙しい中、お仕事帰りにお時間をいただいてありがとうございます。早速ですが、GPTYとは、どのような活動を行うための組織なのでしょうか?

桑野さま:こちらこそ、私たちGPTYの活動に関心を持っていただいてありがとうございます。GPTYの活動に関してですが、プラスチック汚染をなくすための国際プラスチック条約に若者の声を届けることを主な活動としています。現在、世界各国でさまざまな企業や団体、そして市民の方々がプラスチック問題の解決のために多くの活動をされています。彼らがより活動をしやすくなるような世界共通のルールを作りたいと思っています。

あわいひかり:なるほど。そもそもGPTYが結成された背景には、どのようなことがあったのでしょうか?

桑野さま:2022年に行われた国連環境総会で、プラスチック汚染をなくすための法的拘束力のある国際プラスチック条約を2025年までに締結することで各国政府が合意しました。その後、2022年12月、2023年6月に条約交渉が行われましたが、世界的な関心度はあまり高くはありませんでした。それに危機感を持った若者たちが集って2023年の8月にGPTYが誕生しました。私は2024年4月に応募し、参加しています。

あわいひかり:GPTYに所属している方々の人数や年齢層、職種について教えてください。

桑野さま:大学生や30歳以下の若手社会人の15名で活動をしています。職業としては、IT系や化粧品メーカー、包材商社、報道関連など、さまざまな職種の人たちが所属しています。

あわいひかり:GPTYの活動指針や活動の基本となる考えなどがあれば教えてください。

桑野さま:私たちが条約に求めることは、大きく2つあります。
1つ目は、「プラスチックの総量を減らすこと」です。もちろん、プラスチック廃棄物の適正管理やリサイクルなどの取り組みも大切ですが、プラスチック汚染はプラスチックの原材料の採掘から、プラスチックの生産、そして廃棄までのすべてのサイクルで起こっているので、まずはプラスチック廃棄物を出さないことが最も大切だと考えます。
2つ目は、「世界共通ルールの作成」です。これまでプラスチック問題に対して、国や企業、団体、市民がそれぞれ活動を行ってきましたが未だに解決されていません。そこで、世界各国の合意のもと実行される、統一されたプラスチック汚染対策に向けた規制やルールが必要だと考えています。


※普段からリサイクルPETを使用したスーツを着用しているという桑野さま。


あわいひかり:世界中で問題とされているプラスチックの環境負荷について、最大のポイントは何だと思われますか?

桑野さま:私は3つあると思います。
①生態系の問題:ウミガメや海鳥などの体内からマイクロプラスチックが見つかっていることは有名ですが、人の血液中からも見つかっています。中には、心筋梗塞や生殖機能に影響を及ぼす有害化学物質が体内に入っているという研究もされています。

②気候変動の問題:プラスチックの原材料である化石燃料の採掘からプラスチックの生産、廃棄の段階で、温暖化の原因である二酸化炭素を多く排出します。現在、プラスチック関連で排出される二酸化炭素は世界中で排出される二酸化炭素量の6%程度ですが、2050年には20%に拡大するとも言われています。

③人権の問題:長年、日本はアフリカや東南アジアの国々にたくさんのプラスチック廃棄物を輸出してきました。他国の人々の健康や、他国の自然を害している可能性があるのではないかと考えています。

あわいひかり:その問題を解決するために、どのような取り組みや活動を行っていますか?

桑野さま:昨年の夏に、「プラスチック若者会議」を開催しました。日本中から約50名のユースが集まり、プラスチック問題について学び、市民としてプラスチック条約に求めたいことを議論しました。その結果を提言書として環境省、農林水産省、自由民主党、公明党に提出し、意見交換を実施しています。
また、プラスチック条約の内容を決める国際会議に参加し、プラスチック問題の世界の現状を現地の人たちから聞き、その内容をSNSで日本のみなさんにお伝えしています。
また、EUや島しょ国、日本の政府関係者とも意見交換を行って、プラスチック汚染をなくすための実行力のある条約をつくるように呼びかけています。
他にも、地域でリデュース・リユースの取り組みを拡大するため、市民としてどのようなことができるのか議論する「神田プラスチック市民会議」の開催や、プラスチック問題や条約について知ってもらえるように各イベントに登壇するなどの啓発活動を行っています。


※さまざまな議論の場などを設けるのもGPTYの活動のひとつ。


あわいひかり:日本のみならず、世界中で活躍されているのですね!そもそも桑野さんは、どうしてGPTYに参加しようと思われたのでしょうか?

桑野さま:もともと中学生のころから環境問題に興味を持っていました。小学生の時と中学生の時の台風の進路を比べると、その進路が変化していることに気づいたからです。私が生きてきた短い時間の中だけでも、地球環境が大きく変化していることに恐怖を抱きました。地球温暖化の影響で、私が生きている間、また自分の子供や孫が生きている間に、地球は住めなくなるのでは?と危機感を覚えたことが環境問題に興味を持ったきっかけです。

あわいひかり:そんなに台風の進路って変化してますか?

桑野さま:以前はフィリピンあたりで発生して、沖縄や九州、四国を通過して関東に向かっていたと思うのですが、今は沖縄あたりで発生して、直に関東に向かう台風が増えたと思うんです。

あわいひかり:言われてみれば、そういう台風が増えたように思います。

桑野さま:はい。昔に比べて東シナ海あたりの海水温が上がっているのだと思います。

あわいひかり:そのほかには?

桑野さま:私は幼少期を種子島という森と海に囲まれたところで育ち、大学進学で上京し、東京の空が狭い生活に違和感を抱いたとともに、幼少期に私を育ててくれた故郷の自然を守りたいと強く思ったこともあり、環境問題を解決するために、興味がある人もない人も自然と環境配慮行動をとる社会をつくりたいと思いました。

あわいひかり:大学ではどのような勉強をされていたのですか?

桑野さま:大学ではグローバル協力コースに所属し、紛争や環境問題、プラスチック問題、子ども兵士などのあらゆる地球規模の問題に関して、それを解決していくためにはどうしたらいいかというのを勉強していました。卒業論文でも「人々が環境に配慮した行動をとりやすい法整備や社会を作るためにはどうしたらいいか?」という研究をテーマにしていて、その思いが今も続いています。

あわいひかり:現在のお仕事にも繋がっていると?

桑野さま:そうです。環境に配慮した商品やサービスについてたくさん供給できる会社に入社すれば、環境問題に直接関与して貢献ができると考えて、商業施設などの管理をする企業に入社し、食品パッケージを供給する部署で働いています。実際に現場に出るとコストが起因となり、なかなか環境配慮型の商品の拡大は進みませんが、法改正があるときにはどれだけお金がかかっても商品の切り替えをしなければいけません。
例えばアレルゲン表示に誤りがありますとなると、どれだけお金がかかっても表示を変えますよね。法律で正確に表示するように定められていますからね。そう考えると、法の力ってすごいと思います。じゃあ、私も法を変えられる側になろうと、そして国の法を変えるためには世界の条約を変えてしまおうと思ったんです。環境についても法や条約で義務付けることができれば、より環境配慮商品が拡大するのではと思ったので、法や条約を変えるアドボカシー活動が行えるGPTYに参加しました。

あわいひかり:なるほど。社会を動かすルールを策定すれば、必然的に企業や社会が動いていくと考えたのですね。GPTYの活動でのやりがいなどがあれば教えてください。

桑野さま:やりがいとは少し違うかもしれませんが、活動を継続できている理由は「危機感」と「楽しさ」だと思います。危機感については、自分や自分の子ども、孫が生きやすい地球を作るためにという気持ちです。
また、イベント開催や国際会議への参加を通じて、環境問題に取り組むさまざまな人々に出会うことがとても楽しい。彼ら、彼女らがどんな想いでどんな活動をしているのかを知り、自分と同じ気持ちの人がいるということがとても心強いです。環境問題に取り組んでいると人にいうと、意識高い系なの?と距離をおかれることもあり、“自分の住んでいる家=地球のことなのに、なんでみんなは考えないんだろう”とショックを受けることもあります。しかし、国際会議に参加すると自分と同じ価値観の人々にたくさん出会い、“me too.”だけで分かり合えるのがとても心地良いのです。また、世界各国のユースや政府関係者とお話をし、学びが多いことも喜びですね。


※さまざまな国の人たちと意見交換をすることで新しい発見があるといいます。


あわいひかり:本年中にプラスチック汚染を0にする国際プラスチック条約の締結が予定されていましたが、実際に国際会議に参加されてどのように感じていますか?

桑野さま:約200の国が会議に参加していて、それぞれの国がそれぞれの立場で協議に臨んでいるので、意見をまとめるのは大変だと思いました。例えば、EUなどの先進国は、プラスチックの生産を規制して使用量を減らしたいと考えますが、産油国などはプラスチックの生産を規制されると困りますから。

あわいひかり:それぞれの国益がかかっていますから、簡単には合意できませんよね…

桑野さま:そうですね。今年中に条約が成立するのは難しいでしょうが、それでも互いの国を尊重し合い、それぞれが妥協できる合意点を探しながら、プラスチック削減に向けて前向きな議論をすることが大切だと思います

あわいひかり:GPTYの活動を通じて、桑野さんはどのようなことを社会に伝えていきたいとお考えですか?

桑野さま:今と未来を生きる若者たちに、プラスチック問題を含む環境問題について関心を持っていただくこと。そして、プラスチック汚染を解決したいという強い想いを持って活動している人たちが世界中にいることを知ってほしいと思います。

あわいひかり:若い人たちがプラスチック問題を身近な問題と捉えるために、どのようなことが大切だとお考えですか?

桑野さま:最近の夏の暑さで、気候変動の問題を肌で感じることができるようになりましたが、プラスチック問題については、まだまだ自分自身に悪影響を及ぼしていることがわかっていません。プラスチックはとても便利で、私も日常生活の中でとても助けられていますが、人々にどんな影響が及んでいるのかを明確に知る必要があると思います。

あわいひかり:確かにマイクロプラスチックがどのように人体に影響するのかなどは、これから解明されるでしょうし、私たちは知っておくべきだと思います。しかし、プラスチックを0にすることは現状では非常に難しいと思いますが、プラスチック問題を解決するためにどのような社会的変化が必要だと思いますか?

桑野さま:一番は使い捨てではなく、リユース・リフィルなどのシェアリングやマイ容器持参サービスが普及してほしいと思います。
また、どうしてもプラスチックでないといけないものに対しては、リサイクルやバイオ原料、生分解性原料などへの置き換えが主流になる社会になってほしいですね。

あわいひかり:プラスチック製品やパッケージを世に送り出しているメーカーや販売店に対してメッセージがあればお願いいたします。

桑野さま:たくさん日常生活で助けられているので、私はプラスチックが“悪”だと思っていません。ただし、使い過ぎ、生み出し過ぎの部分が問題であると思うので、みんなでリデュースの取り組みや、シェアリングサービスやマイ容器サービスの普及について考えていきたいです。

あわいひかり:そうですね。本当に必要なものだけを作り、あとはリサイクルしたり、代替できるものはしたりすることでプラスチックを可能な限り減らすことは大切なことだと思います。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
これからのご活躍を楽しみにしています。


仕事帰りに、あわいひかりの取材を快くお引き受けいただき、ありがとうございました。

  • 取材・文

    林 健二(リエゾン)