Report レポート

小豆島発、NPO法人が挑む! 海をキレイにする仕組みづくり。

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海洋ごみ問題は、いまや世界共通の環境課題です。日本でも多くのプラスチックごみが海へ流出し、生態系や私たちの暮らしに影響を及ぼしています。
そんな中、香川県・小豆島を拠点に活動するNPO法人「クリーンオーシャンアンサンブル」は、単なる清掃活動にとどまらず、海洋ごみを回収する装置の開発やデータ活用、アップサイクルなど、多角的なアプローチで問題解決に挑戦しています。
今回は共同代表理事の田中秀典さんに、同法人の取り組みと海洋ごみ問題の未来についてお話を伺いました。

「海ごみをなくしたい」から始まった挑戦。

クリーンオーシャンアンサンブルは、創業者である江川裕基さんによって2020年に設立されたNPO法人。江川氏は青年海外協力隊や海外での旅を通じて世界各地のごみ問題を目の当たりにし、「海ごみを何とかしなければ!」という強い思いを抱くようになり、日本に帰国後、活動を始めたということです。当初は東京で活動をスタートしましたが、実証実験の拠点を探す中で、小豆島の漁協が活動に理解を示し、とても協力的であったことから小豆島を訪れた江川さん。地元の漁師さんたちと話していると、みなさんが一様に「昔のきれいな海を取り戻したい」という強い願いを持っていたこととクリーンオーシャンアンサンブルとの想いが一致し、活動の拠点を小豆島に移したと言います。
現在は約35名のメンバーが参加し、システムエンジニアや研究者、気象学の専門家、中小企業診断士など、多彩な人材がボランティアとして活動しているということです。


※クリーンオーシャンアンサンブル代表の江川裕基さん。


※今回お話を伺った共同代表の田中秀典さん。

海洋ごみ回収装置の開発で新たな可能性を切り開く。

ビーチクリーン活動などで「海ごみ」を減らす活動をしている企業や団体はたくさんありますが、クリーンオーシャンアンサンブルの最大の特徴は、海洋ごみ回収装置の開発です。当初は海上で実験を重ねていましたが、潮流が複雑で回収効率が安定しないという課題がありました。


※クリーンオーシャンアンサンブルが開発した海洋ごみ回収装置。

そこで着目したのが河川です。川は流れが一定であるため、ごみが集まりやすく、効率的な回収が可能になります。実験を重ねた結果、海上での回収と比較して約100倍の回収効率を達成。2024年にはその成果を公表し、大きな注目を集めました。海へ流れ出る前のごみを川で回収する。この発想は、海洋ごみ対策における新たなモデルとして期待されています。


※香川県高松市の詰田川で行なわれた河川での海ごみ回収の様子。

毎月、欠かさず行なっているビーチクリーン活動

海洋ごみ回収装置開発と並行して尽力しているのが、毎月1回のビーチクリーン活動。単にごみを拾うだけではなく、回収したごみを分別し、それぞれの重量や種類を細かく記録し、データとして蓄積しています。そして、「どのようなごみが多いのか」「どこから流れてきた可能性があるのか」等といった情報を分析することで、より効果的な対策の立案につなげています。こうした地道な活動は、継続的なデータを収集し、海洋ごみ問題を科学的に理解するうえで重要な役割を果たしているということです。


※毎月、全国各地で行なわれているビーチクリーン活動。

ごみを資源に変えるアップサイクル活動も。

回収したごみを処分するだけでは根本的な解決にはなりません。そこでクリーンオーシャンアンサンブルではアップサイクルにも力を入れています。回収したプラスチックは粉砕してコースターに再生。ガラス瓶は加工して防犯砂利として活用されています。さらに、海岸で回収したルアーや釣り竿を修理して再利用する取り組みも実施。「ごみを資源として循環させる仕組みづくり」は、持続可能な社会の実現に向けた重要なチャレンジとなっています。


※回収した海ごみは形を変えてアップサイクルされています。

深刻化するマイクロプラスチック問題。

海洋ごみの中でも特に問題視されているのがプラスチックです。なぜプラスチックが問題なのかというと、発泡スチロールやビニールなどは時間の経過とともに細かく砕けてマイクロプラスチックになります。これらは魚や貝などの海洋生物に取り込まれ、食物連鎖を通じて私たち人間の体内に蓄積する可能性が指摘されています。
近年では人の血液中からマイクロプラスチックが検出されたという研究結果も報告されており、環境問題だけでなく健康問題としても注目されています。だからこそ、海へ流出する前の段階でごみを回収することが重要だということなのです。


※ビーチクリーンや回収装置によって、 二次マイクロプラスチックの発生源となる大きいサイズのプラスチック回収に取り組んでいます。

海洋ごみ問題を解決するために必要なこと。

海洋ごみ問題の解決にはボランティア活動だけでは限界があると田中さんは指摘します。持続的な活動のためには、経済的に成り立つ仕組みが必要です。
例えばアップサイクル製品に価値が生まれれば、ごみ回収活動そのものが収益事業となる可能性があります。理想は、漁師が魚を取るのと同じように、ごみを回収することが新たな収入につながる社会。そのためには企業の協力も欠かせません。環境配慮型の商品開発や包装材の見直しなど、企業の取り組みが社会全体を変える大きな力になるからです。
また、環境問題への関心は、若い世代ほど高い傾向にあります。大量生産・大量消費から、長く大切に使う社会へと変化してきていると話す田中さん。20〜30年後には消費者の価値観が大きく変化し、環境配慮が当たり前になる時代が訪れると考えています。その変化を後押しするためにも、企業、行政、市民が協力しながら行動を続けることが重要だと話されていました。

クリーンオーシャンアンサンブルが目指すのは「海洋ごみのない世界」

クリーンオーシャンアンサンブルが最終的に目指す未来について、田中さんに伺うと、「最終目標は、回収装置を販売して利益を上げることではありません。効率的なごみ回収のノウハウを全国へ広げ、「海洋ごみのない世界」を実現することです。そのために、川での回収モデルを全国へ展開し、海へ流出するごみを減らしていきたい!」と話します。クリーンオーシャンアンサンブルの挑戦はまだ始まったばかりですが、小豆島という瀬戸内の小さな島から生まれた取り組みは、日本の海洋環境を変える大きな可能性を秘めています。

最後に、海洋ごみ問題は一部の団体だけで解決できる課題ではありません。しかし、クリーンオーシャンアンサンブルのように「回収」「調査」「再利用」「発信」を組み合わせた取り組みは、持続可能な解決策への大きなヒントを示してくれています。
私たち一人ひとりが、使い捨てプラスチックを減らすことや、環境配慮型の商品を選ぶことなどの日常における小さな行動で、日本の、そして世界の海を守ることができます。美しい海を未来へ残し、受け継いでいくために、今できることを私たちも考えなければいけないと切に思います。


海ごみ問題および海ごみ回収装置に関するお問い合わせは

特定非営利活動法人 クリーンオーシャンアンサンブル
香川県小豆郡小豆島町坂手甲986番地

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  • 取材・文

    森近 正大(文案家)