Series 連載

『間』と書いて『あわい』と読むことをご存知でしょうか。
現代ではあまり使われない大和言葉のようですが、次のような意味があるそうです。

『間』『あわい』とは、物と物のあいだ、距離、関係性。
『間』『あわい』とは、時間と時間のあいだ、時間的隔たり。
『間』『あわい』とは、人と人の間柄、相互の関係。

そこには単なる何かと何かの間という空間ではなく、意味のある空間が存在しているような気がしませんか?
このあわいひかりでは、人と自然と、今と過去と、誰かと誰かの間(あわい)について考えていこうと思います。

大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)

「鳥の目、虫の目、魚の目」で未来への道を探します

第11 章 タケノコ掘りから里山の環境を考えてみる

ゴールデンウィークの初日、朝から同僚と一緒にタケノコ掘りに行ってきました。
自宅から車で20分ほどの場所にある道の駅で待ち合わせて、そこからすぐ近くにある竹林を目指します。
その竹林は、同僚のご家族が所有するもので、この時期になると毎年タケノコ掘りをさせていただいています。


タケノコ掘りに向かう同僚のみなさん

道の駅から畑の間を走る農道を抜け、林道を登ると、あっという間に竹林に到着します。まさに「これぞ里山」といった雰囲気で、人の暮らしのすぐそばにある自然豊かな場所です。


ここまで育つと食べるには不向きだそうです

現地に着くと、すでに同僚のお父さんがタケノコ掘りの準備をしてくださっていました。
今年は「裏年」でタケノコが少ないと言われていましたが、それでもあちこちから元気よく顔を出しています。
中には大きく育った立派なタケノコもありましたが、それらはすでに固くなっていて、食べるには不向きだそうです。
そのため、地表に出たばかりのタケノコを見つけて掘るのが、美味しく食べるためのポイントとのことです。


意外と肉体労働です

タケノコ掘りには、専用の細長い鍬を使います。
最初は慣れない鍬に苦戦しますが、2~3本掘るうちにコツがつかめてきます。
地表に出たばかりのタケノコを見つける目も養われ、気づけば小一時間で数十本を収穫することができました。
自分の手で地面を掘り、タケノコを掘り出すこの一連の作業は、普段の仕事では味わえない醍醐味があります。


こんなタケノコがあちこちに

さて、こんな楽しいタケノコ掘りですが、実は里山を守るうえでとても大切な意味もあるのです。
今回訪れた竹林も、もともとは柿の果樹園だったそうです。
それが、成長力の強い竹に徐々に侵食され、気づけば一面が竹林になってしまったとのことでした。
里山に竹林が増えすぎると、次のような悪影響があります。
●    竹は成長が早く、もともとあった雑木林を侵食して単一の林になってしまい、生態系の多様性が失われます。

●    竹の根は浅く、大雨の際に地盤を支える力が弱いため、崩落や土砂災害のリスクを高めます。

●    放置された竹林が隣接する農地へ侵入すると、耕作が困難になったり、日照を遮って作物の生育に悪影響を及ぼすこともあります。


左:竹林 右:果樹園

実際、今回訪れた竹林の隣にも果樹園があり、竹林と果樹園の間には干渉エリアが設けられていました。
そこでは農家の方がタケノコが竹に育たないよう、せっせとタケノコを掘り出して管理していました。
アク抜きなど、調理にひと手間かかるタケノコは、敬遠されがちな食材かもしれません。
でも、そのひと手間を惜しまずに味わうことで、初夏の訪れを感じられるだけでなく、里山の維持にも貢献していることを、ぜひ知っていただけたらと思います。


穫れたーっ!の人

ちなみにこのタケノコ掘り、淡い光が差し込む香川県の里山では、気軽に楽しめるレジャーのひとつです。
たぶん来年も開催すると思うので、興味のある方はぜひご連絡ください。一緒に掘りましょう!

  • 撮影

    大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)