Series 連載

『間』と書いて『あわい』と読むことをご存知でしょうか。
現代ではあまり使われない大和言葉のようですが、次のような意味があるそうです。

『間』『あわい』とは、物と物のあいだ、距離、関係性。
『間』『あわい』とは、時間と時間のあいだ、時間的隔たり。
『間』『あわい』とは、人と人の間柄、相互の関係。

そこには単なる何かと何かの間という空間ではなく、意味のある空間が存在しているような気がしませんか?
このあわいひかりでは、人と自然と、今と過去と、誰かと誰かの間(あわい)について考えていこうと思います。

大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)

「鳥の目、虫の目、魚の目」で未来への道を探します

第 6 章 香川県のジオと果物と

全国的にはあまり知られてはいませんが、香川県はいろいろな果物の産地です。
特に香川県西部の西讃エリアでは、みかんなどの柑橘類と梨が多く栽培されています。
これらはただ単にそれらを栽培しているのではなく、ジオに由来するその土地の特性を活かした栽培を行っていることをご紹介したいと思います。

それではみかんから見ていきましょう。

そもそもみかんの栽培に適した環境はどんな環境でしょうか。
みかんの栽培に適した環境は一般的に以下のようなところと言われています。

①気候が温暖なこと

寒すぎるとみかんの木が枯れてしまうため、年間平均気温が17度前後で、夜に気温が下がりすぎないことがポイントです。
そのためには海も大切な役割をしていて、冬でも周囲の気温を下がりにくくする暖流が近くを流れるエリアが良いとされています。

②日あたりがよいこと

光合成を行う植物にとって、太陽の光は必須です。
ただし、単純に太陽の光を浴びればいいのではなく、すべての葉にまんべんなく日光があたることが大切です。
そのためには日当たりの良い西向きや南向き斜面で、かつ海面から反射する光を浴びることができる海沿いの地域が適しているとされています。

③水はけがよいこと

みかんの成長に水は必須ですが、水が多すぎると甘みの少ない水っぽいみかんになってしまい、美味しいみかんになりません。
そこで、みかんの成長に合わせて水分量をコントロールできる、適度に水はけのよい土地が必要になります。
具体的には粘土質の土壌よりも花崗岩質が風化してできた花崗土などの土壌が良いとされています。

これらの3つ条件を満たすのが、全国的なみかんの産地である愛媛県南予地域であり、和歌山県の有田地区であり、そして香川県三豊市仁尾町の曽保地区なのです。

それでは実際に曽保地区の様子を見てみましょう。


みかんの木は、南や西向きの斜面の段々畑に植えられており、みかんの木の根元には花崗岩質の特徴の黄色い地面が広がっています。
また、段々畑の先には瀬戸内海があり、この海に反射した日光を浴びて甘いみかんが育ちます。
そしてこの海は太陽からの熱を溜め込み、冬の寒さからみかんの木を守る湯たんぽの役割をしてくれているのです。

しかし一方で、花崗岩質の土壌はとてももろく、長い年月の中で大規模な土砂崩れを何度も起こしてきています。(この崩れた土砂が父母ヶ浜の遠浅の砂浜を作っています)
みかん農家さんは、その土砂崩れを克服するために、急な斜面にひとつひとつ石を積んでは石垣を築き土砂の流出を防いできました。

また、水はけの良すぎる土壌では、自然の雨だけではみかんを育てることが出来ませんでした。そこで、農家の皆さんはその斜面にいくつものため池を作り、水を絶やさないようにしてきたのです。

このように、ジオとそこからくる気候や土壌、そして農家の皆さんの努力との共同作業が甘いみかんを育てているのです。

さて、この記事を書いている8月中旬では、みかんの実はまだ小さく色も濃い緑色をしています。
これから2~3ヶ月をかけてみかんの実は、徐々に大きく育ち、色も橙色に変わっていきます。
そして今年も10月下旬頃から露地物のみかんの出荷が始まります。
もし店頭で香川県のみかんを見かけたらぜひ手にとってみてください。
その甘酸っぱい香りの中に、瀬戸内の気候とジオをきっと感じることができると思います。


次は観音寺市豊浜町和田地区の梨編です。

  • 撮影

    大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)