Series 連載
1000軒以上のカレーを食べ歩き、その多様性と歴史、店ごとの個性に魅了され続けてきた。
カレー屋の夢を実現する為、アルバイトの掛け持ちを始めたが挫折。挫折から学んだ経験と、環境への関心も持ち持続可能な未来のための取り組みをカレー業界でも促進したい。独自のスパイスカレーと瀬戸内の食材を焦点を当て連載していく。
安藤 真理子(アートディレクター)
米の価格が高騰してから、飲食店にとって“お米を確保する”ということは、当たり前ではなくなった。
社員食堂のもくせとも例外ではない。
それでも、おかわり自由はやめたくない。お腹いっぱい食べて、午後も元気に働いてほしいからだ。
ちょうど新米の季節。本社の直売店で販売していると聞き、実家が米農家のアカネさんに連絡をした。送ってもらったのは、カレーに合うという”あきたこまち”。
大量の玉ねぎをひたすら飴色になるまで炒めるのが最大のポイント。
普通のスーパーでは売ってない皮付きひよこ豆のチャナマサラ。柿の甘みを忍ばせ煮込む。言わないと誰も気が付かないくらいがいいのかもしれない。
そして初挑戦の梨のアチャール。少し攻めた献立だ。
私のカレーを美味しいと言ってくれる社員。でも他のお店の本物の味を知らないんだよな。
と心の中で思っている私。
お昼どき、社員が食堂に入ってくる。
「久しぶりですよね、カシミールカレー。楽しみにしてました!」
香川から届いた梨は、そのままでも十分おいしい。それをアチャールにしてしまうのは、少し贅沢な遊び心だ。
「これ好きです」
カレーとご飯を頬張る社員を見ながら、台風前の稲刈りや、遠くで回るポンプの音を思い浮かべる。
二日酔いの上司も来ていた。健康診断で引っかかったらしい。
グルメでカシミールの味を知っている数少ない人だから、少しだけ気が抜けない。
一膳のごはんの向こうには、たくさんの手間がある。
そう思うと、今日のカレーはいつもより少しだけ体にしみる味がした。
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文・撮影
安藤 真理子(アートディレクター)