Series 連載

1000軒以上のカレーを食べ歩き、その多様性と歴史、店ごとの個性に魅了され続けてきた。
カレー屋の夢を実現する為、アルバイトの掛け持ちを始めたが挫折。挫折から学んだ経験と、環境への関心も持ち持続可能な未来のための取り組みをカレー業界でも促進したい。独自のスパイスカレーと瀬戸内の食材を焦点を当て連載していく。

安藤 真理子(アートディレクター)
「川鶴酒造さんの酒粕、カレーに使えたりする?」
ある日、本社営業のタカシさんからそんな連絡が来た。
酒粕カレー・・・聞いたことはある。
その時は味の想像ができず「えー酒粕ですか??」と曖昧に笑っただけだった。
週末に予約していたカレー屋さんで、まさかの「サーモンの粕汁風カレー」に遭遇。
白いカレーに鮭のピンクが映えていて、どこか品のある華やかさがある。
ひと口。
あ、これだ!いけるかも。
酒粕特有のまろやかさとスパイスが合わさって、不思議な一体感。
おいしい。これは再現してみたい。
すぐに「酒粕、送ってください!」と連絡した。
数日後、届いたのは川鶴酒造さんの酒粕と“讃岐クラウディ”という素敵な名前とパッケージの日本酒。

川鶴酒造さんを担当している営業のコウキさんが色々と教えてくれた。

「川鶴酒造様は本社の近くの香川県観音寺市で1891年(明治24年)に創業した地元では有名な老舗の酒蔵さんで、とても素材へのこだわりがあって地元香川県産の米や水を使っているんですよ。
あと酒粕って捨てるところがないんですって。
もちろん地元で販売もしているけど、売れ残った酒粕、バラ粕などは漬物用に使ったり、イノシシ捕獲用に活用したりされているそうです。」
昔からさまざまな活用法で使いきる“捨てない文化”。
まさにフードロス削減。私たちの考えにもぴったり。
是非もくせとカレーで使わせてもらいたいと思った。
「讃岐クラウディはとても飲みやすくヨーグルトのようにマイルドで甘味もある濁り酒で、日本酒マイスターの方の記事でスパイス料理との相性が良いと雑誌にも掲載されたんですよ。」
せっかくなので、コウキさんが東京出張のタイミングで「讃岐クラウディ試飲会」を開催することに。
アルコール度数は6%と控えめで、お酒が飲めない私でも飲めるのかな?
前回のもくせとで残しておいたカレーとアチャールをつまみに、社員たちと一緒に乾杯。

ひと口飲むと、爽やかな甘みと酸味。
そしてラッシーのようにスパイスや辛さを中和してくれる。
「スパイスの辛さが和らぐね」と、みんなが口々に。
数日後。パラパラと古いカレー雑誌をめくっていたら、酒粕カレーのレシピを発見。
おお、これだこれ!これで完璧な酒粕カレーが作れる!!
入れるスパイスはたった6種類、こんなに少ないスパイスであの味になるのか?
味噌を入れコクを出し、ココナッツパウダーで酒粕とスパイスの間をつなぐことで全体が調和する。
旬の素材を使ったアチャールも用意して、初めて夜営業をしてみることにした。

仕事が終わった社員達が揃ってやってきた。
遅くなりました〜!
残業でお腹を空かせた社員達がいい香りに誘われて次々と席に着く。
「今日のおすすめは酒粕カレーと相性バッチリなホタルイカのアチャールです」

「えー美味しい!これ好き!」
「私が今まで食べた中でトップ3に入ります!」
そんな言葉が飛び交うと、社員食堂をやってよかったなと心から思う。
カレーとアチャールを囲んで過ごす夜。
時間も忘れて話も盛り上がり、気づけばいい時間。
またタカシさんからの連絡が。
「たけのこ堀りに行くから、送るね!」
「たけのこだって!嬉しい。次のカレーはたけのこだね。」
「たけのこどうやって使おうか。」
とまたワイワイ盛り上がる。
お腹も心も満たされた社員たちは、
アチャールをお土産に詰めて、それぞれの夜へと帰っていった。
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文・撮影
安藤 真理子(アートディレクター)