Series 連載

1000軒以上のカレーを食べ歩き、その多様性と歴史、店ごとの個性に魅了され続けてきた。
カレー屋の夢を実現する為、アルバイトの掛け持ちを始めたが挫折。挫折から学んだ経験と、環境への関心も持ち持続可能な未来のための取り組みをカレー業界でも促進したい。独自のスパイスカレーと瀬戸内の食材を焦点を当て連載していく。

安藤 真理子(アートディレクター)

第12話 ケノコのビリヤニ、再び

NEW

もくせとカレーを始めて2回目になるタケノコの季節の頃、ズッシリ重いダンボールが届いた。
「なんだ、これ……」
箱を開けてみると、そこには見たこともないくらい大きなタケノコがぎっしり詰まっていた。


思わず「でかっ!」と声が出た。
どうやら、本社のメンバーで初夏恒例になりつつあるタケノコ掘りに行ったらしい。(詳しくは第9話に掲載)
「今年は当たり年で、豊作でしたよ」とタカシさんから連絡が来た。


タケノコは、地上に少しだけ頭を出している部分から、ずっと深い地中へと伸びる地下茎から生えている。
掘るときは、タケノコを傷つけないようにしながら、地中深くにある根の向きを想像しなければならないという。なかなか難しいらしい。
「へぇー、そうなんですね」
興味はある。ただ、腰は重い。
そんな私にタカシさんが写真を見せてくれた。
そこには、掘ったばかりのタケノコをその場で天ぷらにし頬張る光景があった。


……これはずるい。絶対においしいやつだ。
「野外で食べる揚げたてのタケノコは、柔らかくて絶品でした」
タカシさんは少し誇らしげに言った。天ぷらは正直かなりうらやましい。
しかし、負けてはいられない。

東京のみんなにも、おいしいタケノコ料理を食べてもらおう。
去年大好評だったタケノコのビリヤニと、タケノコのアチャールを作ることにした。
そしてカレーは、ずっと作ってみたかったチェティナードチキンカレー。
メニューは決まった。
問題は、この巨大なタケノコである。
「これ、どこまで食べられるんだろう……」と思いながら皮をむいた。
スーパーで売っているタケノコの3倍以上はある。
米ぬかを入れて、じっくり茹でる。
硬そうな部分はビリヤニに。柔らかい部分はアチャールに。
そう決めていたのだが、しっかり茹でたせいか硬そうに見えた部分まで案外おいしく食べられそうだった。
そして、ビリヤニとカレーが完成。


厨房には、濃厚なスパイスの香りが広がっていた。
そこへ社員が入ってくる。
「なんか久しぶりのカレーですね。タケノコのアチャール、楽しみにしてきました!」
去年作った料理をみんなが覚えていてくれた。それだけでなんだか嬉しい。
「チェティナード? チキンカレー? 新メニューですか?」
「これ、一番好きかも」
またランキングが更新されてしまった。笑。

そんな中、いつも二日酔いの上司が入ってきた。
……ん?
今日は、いつもと様子が違う。
「少しでいい」
少し?・・またダイエットですか?

健康診断の結果が、予想以上に良くなかったという噂は聞いていた。
どうやら血圧が150まで上がっていたらしい。
「酒はやめた」と上司が言う。
「またまたー。意思弱いじゃないですか!」
いつもの軽口を叩くと、
「もう10日は飲んでない」と返ってきた。
「本当ですか??」

しかし、カレーは好みだったらしい。
「少しでいい」と言っていたはずなのに、おかわりをして戻っていった。
禁酒は10日。カレーはおかわり。
さて。
「禁酒、続けられますかね……」

上司の連載「昨日も飲んでしまいました」もコンセプトの変更を検討しているらしい。
どうせすぐ飲むだろうけど、一旦は気遣う返事をしておいた。

そして、この連載も今回で12話目。
体調を崩しがちな社員がいたり、社員食堂がなく昼ごはんを食べていない人がいたり。
「それなら、カレーを作ろう」と始まったこの取り組み。
瀬戸内の食材とともに12回。

いろいろなカレーを作ってきた。

そんなカレー作りも、ここでひと区切り。
次回からは、少し違った形でまた新しいカレーの話を、お届けします。

  • 文・撮影

    安藤 真理子(アートディレクター)