Series 連載

『間』と書いて『あわい』と読むことをご存知でしょうか。
現代ではあまり使われない大和言葉のようですが、次のような意味があるそうです。

『間』『あわい』とは、物と物のあいだ、距離、関係性。
『間』『あわい』とは、時間と時間のあいだ、時間的隔たり。
『間』『あわい』とは、人と人の間柄、相互の関係。

そこには単なる何かと何かの間という空間ではなく、意味のある空間が存在しているような気がしませんか?
このあわいひかりでは、人と自然と、今と過去と、誰かと誰かの間(あわい)について考えていこうと思います。

大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)

「鳥の目、虫の目、魚の目」で未来への道を探します

第13 章 ジオパークがつなぐ大地と暮らし ~三好ジオパークを訪ねて~

NEW

皆さんは「ジオパーク」という言葉を聞いたことはありますか?
地球科学的に意義のあるサイトや景観を、保護・教育・持続可能な開発のすべてを含んだ総合的な考え方で管理しているまとまりのあるエリアを「ジオパーク」と呼びます。
そこでは、大地(ジオ)の成り立ちや、その上で育まれる動植物・生態系(エコ)、そしてそこで暮らす人々の文化や歴史(ヒト)の関わりを丸ごと楽しむことができます。

日本国内のジオパークには、ユネスコが認定する「ユネスコ世界ジオパーク」と、日本ジオパーク委員会が認定する「日本ジオパーク」の2種類があります。
現在、日本ジオパークは48地域あり、そのうち10地域がユネスコ世界ジオパークとしても認定されています。

そして、2025年11月9日現在、四国には4つのジオパークがあります。
そのうち、徳島県西部にある三好ジオパークは、2024年10月9日に認定された新しいジオパークです。
私はこの三好ジオパークを、今年の夏に訪れてみました。


(出典:三好ジオパーク公式サイト)

三好ジオパークは、徳島県の西端に位置する三好市と東みよし町にまたがるジオパークです。
大きく分けると、①四国山地や讃岐山脈の斜面で発生した「地すべり」跡にできた集落とそこでの暮らし、②中央構造線の活動や吉野川の流れが生み出した地形と、それに根づいた文化や生活、の2つのエリアから構成されています。
険しい四国山地と、それを貫く雄大な吉野川の流れが織りなす、見ごたえある風景が特徴です。


今回は、その中でも地すべり地形が生み出した集落のひとつを訪ねました。
自宅のある香川県観音寺市を車で出発し、讃岐山脈を越えて吉野川沿いを南下。さらに支流の祖谷川沿いの国道439号線を1時間ほど進んだ山あいに、目指す落合集落はありました。


平地の多い香川県から訪れた私には、「なぜこんな急斜面に人が住んでいるのだろう」と思うような景色でした。
聞くところによると、昔の人々は尾根伝いに移動し、住みやすそうな斜面を見つけるとその一番上に住み着いたのだそうです。
つまり、斜面の最上部の住宅が最初にできたもので、そこから少しずつ下に集落が広がっていったといいます。


実際にその集落に入っていくと、つづら折りの道路の両脇に斜面に沿った畑が広がっていました。
この日はちょうど地域の草刈りの日だったようで、あちらこちらで住民の方々が作業をしていました。
斜面しかないこの土地で今も暮らしを続けている人たちの姿に、強い驚きと尊敬を覚えました。
特異な地形そのものよりも、むしろそこに根づく人々の生活の方が、ずっと興味深いと感じました。




さて、今回訪れた三好ジオパークを含め、四国には次の4つのジオパークがあります。


(出典:日本ジオパークネットワーク 公式サイト)

室戸ジオパーク(ユネスコ世界ジオパーク/高知県)
土佐清水ジオパーク(日本ジオパーク/高知県)
四国西予ジオパーク(日本ジオパーク/愛媛県)
三好ジオパーク(日本ジオパーク/徳島県)

ご覧のとおり、私が住む香川県にはまだジオパークがありません。
しかし、香川県には飯野山や屋島をはじめとする特徴的な地形や、それらが生み出す風景、人々の暮らしなど、ジオパークになりうる要素は多く存在しています。

そんな香川県で、県全域を対象にジオパーク認定を目指して活動しているのが「讃岐ジオパーク構想推進準備委員会」です。


(出典:讃岐ジオパーク構想推進準備委員会 公式サイト)

ジオパークに認定されるためには、単に特徴的な地形(ジオ的要素)があるだけでは不十分で、その地域を運営・保全する組織体制が整い、保全・研究・教育・普及活動が継続的に行われている必要があります。

自分たちが暮らす土地に関心を持つことは、毎日の暮らしを少し楽しくしてくれます。
ぜひ、讃岐ジオパーク構想推進準備委員会の活動にも興味を持っていただけたらと思います。


関連リンク
日本ジオパークネットワーク公式サイト  
三好ジオパーク公式サイト 
讃岐ジオパーク構想推進準備委員会 公式サイト 

  • 撮影

    大西 貴志(エコロジカルパスファインダー)